長寿社会の課題と可能性
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「エイジング・イン・プレイス」の意味と取り組み
長寿社会の課題と可能性(5)「Aging in Place」の実現
秋山弘子(東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授)
東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授が、住み慣れたところでいつまでも自分らしく年を取るという「Aging in Place」の考え方と、それに向けた取り組みを紹介する。Aging in Placeを実現するためには、循環型の住宅政策や地域包括ケア、移動手段の見直しなど、従来のインフラの転換が必要だ。ICTの活用も欠かせない。(全6話中第5話)
時間:10分08秒
収録日:2017年4月12日
追加日:2017年5月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●住み慣れたところで、安心して自分らしく年を取る


 Aging in Placeとは、少し弱ってきても、住み慣れたところで、安心して自分らしく年を取るということです。75歳以上の方にヒアリングをすると、ほとんどの方が、今の生活を来年も、3年後も、できれば10年後も続けたい、と言われます。例えば、冬になるといつも行くお豆腐屋さんで豆腐を買ってきて、いつもの土鍋でいつものタレで湯豆腐を食べる、というようなことです。そういう日々の生活を来年も10年後もできたらいい、と言うのです。それを実現するのが、Aging in Placeです。住み慣れたところで年が取れるように、ということです。


●人生100年時代には、ライフステージに応じて家を住み替えていく


 まず、住宅のことを考えなくてはいけません。ご存じのように、日本は持ち家政策を進めてきました。例えば、サラリーマンが40歳くらいになる前に、土地を見つけてローンを組んで、2階建ての家を造って、そしてローンを返していく。こうしたことが推奨されていました。ところが、寿命が60歳ほどだった頃はそれで良かったのですが、今90歳、100歳まで生きるようになると、問題が出てきます。お父さんが一生懸命働いて造ってくれた家に、ストレスを感じる人が非常に多いのです。例えば、子どもが出ていってから2階の部屋は一度も開けたことがないとか、庭木や雑草が茂っているから、カーテンを閉めっぱなしにしている、といったことがあります。2階建ての一軒家に、2人ならまだしも、1人で住んでいる方が非常に多く、それがストレス源になっているのです。

 つまり人生100年時代には、それぞれのライフステージに応じて、必要な家に住み替えていくという、循環型の住宅政策が望ましいのではないかと考えています。そこで、今建て替えている柏のURの団地には、小さいユニットと大きいユニットを設けました。子育てをしているときには大きなユニットに住み、子どもたちが成長して家を出ることになったら小さいユニットに移る。1人暮らしが少し不安になったら、サービス付きの高齢者住宅に移ったり、もっとケアが必要になるのであれば、同じ敷地内にあるグループホームに移る、という具合です。こうすれば、同じスーパーに行って、同じお医者さんに診てもらって、そして顔なじみの中で暮らしていくということを続けながら、家を住み替えていくことになります。こうした循環...

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