●千葉県柏市で長寿社会対応のまちをつくる社会実験を行う
私たちは、都市部と地方で、ごく普通の典型的なまちを取り上げて、社会実験のフィールドにしています。都市部のまちは、千葉県の柏市です。もう1つは福井県の福井市です。この2つのまちを、長寿社会対応のまちにしようとしています。
千葉県の柏市は、典型的な郊外のベッドタウンです。常磐線の柏駅から歩いて15分か20分ぐらいの所に、豊四季台団地というUR(前身は日本住宅公団)が造った団地があります。この団地は50年程たっており、建て替えの時期を迎えていました。住宅問題も一緒に考えることができるため、ここを核にして社会実験を行い、それを柏市全体に広げていこうとしています。豊四季台団地は今、高齢化率が40パーセントほどです。これはある意味で、日本の将来の人口比率を先取りしています。したがって、社会実験をする場としては、非常に適しているのです。
これがその公団です。皆さんの近くにもあるようなものです。左上は空から撮った写真ですが、エレベーターのない5階建ての建物が5,000戸並んでおり、かなり大きな団地になっています。下の写真は商店街です。昔は40軒近い商店があって、子どもたちが飛び回っていました。しかし今は、シャッターが下りているお店も多く、例えばおもちゃ屋などもなくなって介護用品のお店ができるなど、かなり様変わりをしています。
●団地を建て替え、長寿社会対応の施設を造る
これがこのコミュニティーの構想図です。建て替え後にこうしたまちになると良いだろうと考え、URと一緒に取り組んでいます。5階建ての住棟を建て替えて、10階あるいは14階の高層のビルにする。もちろんエレベーターがあるし、バリアフリーもあります。高層化すると空き地ができますが、それをうまく利用して、長寿社会対応の施設を造るよう提案しています。
例えば、団地の真ん中に在宅医療の拠点やコミュニティー食堂をつくります。若い人も高齢の方も、1人暮らしが増えていますが、そうした人たちが集まって一緒に食べられるような食堂です。これがコミュニティーのダイニングルームとなれば、人の絆づくりにつながるでしょう。さらに、介護施設やサービス付きの高齢者住宅も、団地の中に入れていきます。
●定年後にしたい活動の第1位は仕事、第2位は学ぶこと
このプロジェクトをごく簡単に説明すると、自立期間の延長、すなわち、皆が元気で健康長寿に暮らすことが目標です。その際、「全員参加・生涯参加」がプロジェクトのモットーになります。
先ほどから述べているように、私たちの人生はこれまでの倍の長さになりました。人生50年時代だったのが、今は人生100年といわれています。人生50年時代には、定年後は余生でした。かつては盆栽の手入れや孫の世話をして、お迎えを待つというのが、穏やかな余生だったわけです。ところが、団塊世代が定年を迎える頃から、定年後はセカンドライフの始まりだという認識を持つようになりました。もう1つ人生がある、ということです。
一昨年(2015年)行った調査の中で、50歳から64歳の次世代の高齢者に、「あなたが65歳になって定年したら、どんなことをしたいですか、どんなことをしていると思いますか」と質問しました。そうすると、1番目に関心度が高く、実際にしているだろうという活動は、仕事・就労でした。2番目は、自分を磨く、学ぶということでした。
仕事といっても、必ずしも定年を延長してフルタイムで東京にまで働きに行くということではないでしょう。しかし、それでもやはり何らかの形で現役で仕事をしていたい、というのが皆さんの願いなのです。また、自分を磨くというのは、第2の仕事をするために資格の勉強をするということかもしれませんし、現役のときには忙しくてできなかったこと、例えば『源氏物語』を読む、考古学の勉強をする、ギターを本当にマスターする、ということがあるでしょう。このようにいろいろな形で「学ぶ」ということが、2番目の関心事でした。つまり今の人は、盆栽の手入れをしてお迎えを待つというようなことを、決して考えていません。
●近い所になるべく多くの仕事場をつくることが大事だ
そこで私たちが始めたのが、セカンドライフの就労です。「柏都民」という言葉もあるように、柏の住民の方は朝早くに出て東京で働き、夜遅くに帰ってくるという生活を何十年もしています。そして、定年退職後に柏に帰れば、24時間柏にいるという生活になります。その際には、家族以外に誰も知っている人がいない、柏で何が起こっているかということも分からない、ということになってしまいます。しかし、皆さんは60代でも元気だし、いろいろな知識やスキル、仕事関係のネットワークも持っています。何かをしたいと思いながらも、何をしていいのか分...