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元気な高齢者が社会を支えられる仕組みが必要

長寿社会の課題と可能性(2)高齢者の自立と人間関係

秋山弘子
東京大学名誉教授/東京大学未来ビジョン研究センター 客員教授
概要・テキスト
東京大学高齢社会総合研究機構の秋山弘子特任教授が、高齢社会の現状と課題解決のための社会実験について解説する。少子高齢化が進む中、高齢者の人間関係は希薄化し、70代半ばから大半の人は自立度が低下していく。秋山氏はこうした課題の解決のために、長寿社会対応のまちづくりを目指した、社会実験を行ってきた。(全6話中第2話)
時間:14:15
収録日:2017/04/12
追加日:2017/05/18
カテゴリー:
≪全文≫

●社会全体の支え合いの構造を見直す必要がある


 このグラフは人口ピラミッドを半分に切ったもので、真ん中の図が2030年の日本の人口の年齢構成の予測になります。2030年ですので、たった13年先のことです。上にある黄色い部分とオレンジ色の部分が、65歳以上の人口を示しています。この2つの部分を合わせると全人口の3分の1、しかもオレンジ色の部分で示される75歳以上の人口が20パーセントになっています。つまり、5人に1人が75歳であるという状況が、ほぼ確実に来るというのです。こうなると、なかなか今のインフラでは対応できません。

 この図は財務省のホームページから引用したものですが、社会全体の支え合いの構造を見直す必要があるということが分かります。65歳で赤い線を引いてみると、下が社会を支える現役世代、そしてその上が支えられる世代です。支え合いの比率についていえば、1965年には9.1人の現役世代で1人の高齢者を支えていましたが、今は2.4人で1人、そして2050年には1.2人で1人の割合になってしまいます。したがって、初めは胴上げ状態であったのが、今は騎馬戦で、将来は肩車になるということが予測されています。肩車の状態になると、もはや日本の社会保障制度は成立しなくなり、日本の経済自体も立ち行かなくなるでしょう。これをどうにかしなくてはいけません。


●元気な高齢者には社会を支える側に回ってもらった方が良い


 ただし、これは日本だけの課題ではなく、先進国共通の課題です。少子高齢化とともにこうした状況が起きてきますが、欧米はこれを外国からの若い労働者を増やすことによって解決しています。日本にとってもこれは選択肢の1つだとは思いますが、その前にすべきことがあります。1つは、日本は女性の就業率が非常に低いことに関するものです。女性の就業率はOECDの中で、20~30位ほどではないかと思います。有能な女性が生産労働人口の中に入ってきていません。したがって、まずは、子育てをしながら安心して働けるような環境づくりをしなければいけません。これは、現政権もかなり力を入れているところです。

 もう1つは、現役世代に支えられている高齢者です。この人たちが元気に年齢を重ねているということは、日本の宝だと思います。そして、こうした人の多くが、自分は支えられる側よりもむしろ支える側にありたい、現役でいたい、という意思を持っています。しか...
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