知性の進化と科学技術文明の未来
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なぜ人類は進化できたか?…5つの環境要因と脳の発達
知性の進化と科学技術文明の未来(1)ヒトは本当に賢いか
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
人類の進化史は約600万年。それに引き換え、産業革命以来のおよそ100年間は、あまりの超高速で環境変化が起きていると、総合研究大学院大学長の長谷川眞理子氏は言う。変化の果てに待っているのは何なのか? 多忙な日々の中、時には立ち止まって、悠久の時の流れと人類の行く末について考えてみるのはどうだろうか。(全3話中第1話)
時間:11分19秒
収録日:2017年10月18日
追加日:2018年1月19日
カテゴリー:
≪全文≫

●多様な生物の中、ヒトの特色が生んだ科学技術文明


 総合研究大学院大学の長谷川です。私の研究する分野はもともと「自然人類学」という人類(ヒト)の進化からきていますので、今日は科学技術文明の姿や未来について、何百万年という非常に長い人類進化の歴史、少なくともヒト(ホモ・サピエンス)の20万年を考える立場からの疑問を投げ掛ける意味で、少し話をしてみたいと思います。

 地球上には非常にたくさんの生物が進化してきました。現在知られている、つまり名前(学名)が付いているのは200万種ほどですが、それで全部ではありません。2000万種なのか、2億種なのか、オーダーも分からないほど大勢の生物がいます。それに加えて、これまでに絶滅してしまった種も膨大な数に上ります。地球上に現れた生命のうち、おそらく99パーセントは絶滅しているだろうといわれています。そのうちで現在も残り、繁栄しているのが何万種いるかは分からない状況なのです。

 そうした中で、記録媒体を持ち、知識を常に改訂しながら、時間・空間を超えて仲間に伝達して、集合知というものを築いてきたのは、生物の中でおそらくヒトだけだと思われます。そうしたヒトが持つ特色や特徴が、最終的には今の科学技術文明を生んでいるわけです。


●人類進化の600万年を振り返ってみると


 私は人類学者なので、人類という生物の全体としての進化を考えるわけですが、人類に一番近いのが現在のチンパンジーで、そこから分岐したのがおよそ600~700万年前の話です。

 250万年前ぐらい前に私たちホモ・サピエンスと同じ「ホモ属」という種類が出てきました。その時の脳容量は900ccほどになっています。アフリカから出てきましたが、アフリカだけではなくアジアやヨーロッパなどの旧大陸にも広がりました。

 ところが結局、彼らは絶滅してしまい、およそ20万年前にアフリカにいた集団から、ホモ・サピエンスという私たち自身の種が新たに出てきて、今に広がっています。

 今の私たちホモ・サピエンスが出てきたのが20万年前。その私たちがアフリカを出て広がっていったのは10万年前か、あるいは9~7万年前ごろ。20万年前に出てきてすぐに広がったわけではなく、かなり後半になってから全世界に広がっているのです。

 それから3万年前に芸術のようなものが出てきて、1万年前に農耕と牧畜が始まりました。そのような、非常に...

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