ヒトの進化史と現代社会
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人類の歴史は600万年の進化史でみれば殆ど狩猟採集時代
ヒトの進化史と現代社会(4)ヒトの社会は共同繁殖
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
自然人類学者で総合研究大学院大学副学長・長谷川眞理子氏が、ヒトの大きな脳と現代社会の関係を解説するシリーズ講話最終回。ヒトは異様ともいえる進化を遂げて、今の生活を手にしたわけだが、それは他の動物との決定的な違いがあったからだ。その大きな特徴とは?(全4話中第4話目)
時間:11分19秒
収録日:2015年12月14日
追加日:2016年3月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●人類は600万年、ずっと狩猟採集生活だった


 これほど大きな脳を持った結果、人間は発明をしたり、探検によって発見をするなど、どんどんといろいろなことをして産業を興し、今の世の中になりました。多分、いろいろな経済界の方々、あるいは一般の人は皆、人間はこういう暮らしをしているのが当たり前だと思うかもしれません。こういう環境で、こんなふうにたくさんエネルギーを使って、いろいろなものがあって、そして、何よりもお金というのがある。貨幣でものを買うことによってさまざまな欲求を満たしていくということが、人間にとって当たり前のことだと思うかもしれません。

 ですが、人類学者は、(対象にする)タイムスパンが非常に長いのです。600万年前から人類はチンパンジーと別の道を歩み始めた。そして、250万年ぐらい前に、私たちと大体同じホモ属が出現した。20万年前に私たち自身であるサピエンスが出現しました。この時間軸の流れで考えると、この図にあるように、600万年という人類史を見た場合、ずっと狩猟採集生活なのですね。定住生活でもない、農耕も牧畜もしてなくて、獲物をとって、食べられる植物を採って、その日食べられるだけ食べる、電気もなければ冷蔵庫もないので、ためてもおけないから皆、食べてしまいます。そして、皆でキャンプファイヤーの回りでお肉でも焼きます。といってもお肉があればですが、お肉がない日は何日もあるから、そういう時は種子やおいもなど掘ったものを食べる。そうして、獲物が捕れなくなったらどこかへ歩いていくという狩猟採集生活でした。


●今の文明社会は600万年の最後の一秒分


 600万年全部そうした生活を続けた後、最後の1万年で農耕と牧畜が始まりました。ですから、人類というところから見ると、農耕、牧畜は人類の歴史上600分の1でしかないわけです。今度はこの1万年を拡大し1万年前から現在を見ると、1万年前に農耕と牧畜が世界のいろいろなところで始まったというだけの話で、それでもまだほとんどの人が狩猟採集を続けていたわけです。それで、5000年ぐらい前に古代エジプト文明やメソポタミア文明などが始まりました。そして、最後の100年~150年ぐらいが産業革命です。1万年の中の100年だと、100分の1です。産業革命が起こったのはもう少し前かもしれませんが、この100年から今を見ると、電...

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