進化生物学から見た少子化問題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
女性の社会進出で「子育ての楽しみ」は割り引かれる
進化生物学から見た少子化問題(4)少子化が起こる理由
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授)
社会・文化が発展して先進国となり、女性の学歴が上昇して社会進出が起こると、出生率が減るのはいったいなぜか。総合研究大学院大学理事で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏が、少子化メカニズムの生物学的・脳科学的な理由を語る。(全5話中第4話)
時間:5分48秒
収録日:2017年1月16日
追加日:2017年3月31日
≪全文≫

●「今の喜びがどれだけあるか」も意思決定の大きな要素


 前回お話ししたとおり、人間の意志決定の心理には時間割引が働いているので、子どもを持とうとする意思決定が先延ばしされてしまうことが、少子化の非常に大きな原因だと思います。

 ただ一方で、将来の喜びに対して「今の喜びがどれだけあるか」も意思決定の大きな要素となります。今は楽しみがなく、将来子どもを持つことくらいしか希望が持てない女性と、今目の前に楽しみがたくさんある女性では、将来の楽しみをどう考えるかは全然違います。

 現代の先進国では、女性が自分の一生の中で、自分のキャリアを追求したり、自分をより美しくしたり、自分の生活を確実に楽しんでいます。しかし、途上国の女性たちには今もそうしたチャンスが少ないのが現実です。学校に行くこともできなければ、政治に参加することも、自分自身の財産を持つこともできない女性が数多くいます。彼女たちは今もたくさん子どもを産んでいます。

 つまり、女性の地位や学歴が向上し、社会進出が進み、女性が自分自身の価値を追求していいという世の中になればなるほど、現在の楽しみが大きくなり、将来の、特に子育ての楽しさは割り引かれていくのです。


●女性の社会進出によって将来の子育ての楽しさは割り引かれていく


 どの国でも、途上国のような文化・経済の発展段階では出生率が高かったけれども、(先進国になるにつれて)出生率が下がっています。社会経済的に発展して、女性の学歴が上昇して社会進出が起こると、出生率が減ることはこれまでも知られていましたが、その生物学的・脳科学的な理由は誰も説明していませんでした。女性が自己に投資して楽しい生活を送れるようになると、目の前の楽しみと将来の子育ての楽しみが比較され、時間割引が起こることは、おそらくこれまで誰も言ってこなかったのです。私は、このことが社会経済の発展によって少子化が起こる基本的な理由だろうと思います。

 もちろん女性が社会進出したら仕事を一生懸命にするので、子育ての時間は減ることになりますが、そのときにもう一歩踏み込んだ質問をすると、なぜ仕事が持てるようになり、学歴を追求し、キャリアを追求することができるようになった女性は、子育てを軽く見てしまう傾向にあるのか。なぜ今の仕事を続けたいということに、より喜びを感じるのか。それは、社会経済的要...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
もっと知りたいイヌのこと(1)イヌの歴史を振り返る
オオカミはいつイヌになったか…犬の起源と家畜化の歴史
長谷川眞理子
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之
ChatGPT~AIと人間の未来(1)ChatGPTは何ができて、何ができないか
ChatGPTは考えてない?…「AIの回答」の本質とは
西垣通
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
発酵はマジックだ!
色を消し、脂を溶かし、水を分解―スゴすぎる発酵の力!
小泉武夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(9)「トランプ大統領」の視点・論点
【テンミニッツで考える】「トランプ大統領」をどう見るか?
テンミニッツ・アカデミー編集部
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照
AI時代と人間の再定義(1)AIは思考するのか
AIでは「思考の三位一体」が成立しない…考えるとは?
中島隆博
「同盟の真髄」と日米関係の行方(7)トランプ氏の評価とその実像
こりごり?アイ・ラブ・トランプ?…トランプ陣営の実状は
杉山晋輔
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
『貞観政要』を読む(2)著作に登場する人物たち
房玄齢・杜如晦・魏徴・王珪―太宗の四人の優れた側近
田口佳史
ソニー流「人的資本経営と新規事業」成功論(2)“変わり者”の生かし方と後継者選び
「人材の組み合わせ」こそ「尖った才能」を輝かせる必勝法
水野道訓
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己