進化生物学から見た少子化問題
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
少子化問題にはどのような社会的サポートが必要か?
進化生物学から見た少子化問題(5)少子化を変える方法
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
近現代文明は子どもを減らす方向に考えを推し進めるばかりで、子どもをたくさん持とうとはさせない社会だが、少子化の状況をどうにか変える手立ては考えられる。そう語るのは、総合研究大学院大学理事・学長で先導科学研究科教授の長谷川眞理子氏だ。それはどのような手立てなのだろうか。(全5話中第5話)
時間:11分59秒
収録日:2017年1月16日
追加日:2017年4月7日
≪全文≫

●社会的サポートの不足や世代間の分断も少子化の要因だ


 「時間割引」の観点から少子化を説明してきましたが、少子化はもちろん単一の原因で起こっているわけではありません。その他にもさまざまなことが期せずして一緒になり、少子化が進んでいると思います。

 ヒトは共同繁殖ですから、保育所がなかったり、父母(祖父、祖母)に子育てを手伝ってもらえなかったり、職場と住居が遠かったりして、社会的サポートの条件が悪いとき、「育てたくないな」というように子育てが心地よく感じられないのは当然です。自己成長の喜びがさほど大きくなく、将来の子育てに期待したいと思っている女性でさえ、社会や周囲が支えてくれるという安心感がないと、なかなか出産・子育てには踏み込めません。ですから、社会的サポートが整っていないところでは少子化を促進させてしまうでしょう。

 それから、戦前までの長い間は、親と子どもの職業がだいたい同じでした。ですから、農林水産業でも商業でも、自分のやっていることを子どもに継承させて、もっと繁盛・拡張させてほしいという家族の望みがありました。そうした社会では、子どもは自分たちの貴重な労働力でもあったし、自分たちの老後を支えてくれる絆でもあったわけです。つまり、職業の継承と子どもをつくることが一致していた時期が長かったのです。

 それが戦後は都市化や核家族化が進んだことで、親の職業と子どもの職業が分離してしまいました。そのため、子どもを残して家業を継いでもらうという切実な問題がなくなってきたのです。現代では多くの場合、所帯を持つことと家業を継ぐことの間には何の関係もありませんし、ましてや子どもの数によって家の繁栄が決まることはありません。しかも個人ベースで年金が入りますから、老後を子どもに頼る必要も減りました。そのため、世代間の分断が進み、世代間の継承や世代の相互乗り入れの部分がなくなってきています。このこともまた少子化の促進要因になっているでしょう。


●子どもが赤ちゃんや幼児と共に過ごす経験が不足している


 そもそもヒトは、生まれてくることが分かった実体としての子どもに対して、愛情のスイッチをどうやって入れるかということに関して、その仕組みは生物学的に備わっているし、オキシトシンというホルモンが出ると子どもに愛着を感じるようになるといわれています。しかし、生まれて...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
巨大地震予知の現在地と私たちにできること(1)地震予知研究と前兆すべり
地震予知に挑む!確かな前兆現象を捉える画期的手法とは
梅野健
ブラックホールとは何か(1)私たちが住む銀河系
太陽系は銀河系の中で塵のように小さな存在でしかない
岡朋治
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
生成AI・大規模言語モデルのしくみ(1)生成AIとは何か
10年で劇的な進歩を遂げた生成AIと日本の開発事情
岡野原大輔
ヒトの性差とジェンダー論(1)「性」とは何か
MLBのスーパースターも一代限り…生物学から迫る性の実態
長谷川眞理子

人気の講義ランキングTOP10
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(1)北斎の画狂人生と名作への進化
葛飾北斎と応為…画狂の親娘はいかに傑作へと進化したか
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(1)強力な世界政府?ホッブズの思想
平和の実現を哲学的に追求する…どんな平和でもいいのか?
川出良枝
プロジェクトマネジメントの基本(3)プロジェクトのすすめ方
PDCAサイクルを回すための5つのプロセスとそのすすめ方
大塚有希子
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
編集部ラジオ2025(30)西野精治先生に学ぶ「熟睡の習慣」
熟睡できる習慣や環境は?西野精治先生に学ぶ眠りの本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
中国共産党と人権問題(2)中国共産党は超法規的存在?
国家の上に存在する中国共産党はどのような組織なのか
橋爪大三郎
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑