知性の進化と科学技術文明の未来
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科学技術発展の原動力、人間の欲望は精査されるべきか?
知性の進化と科学技術文明の未来(3)予測できない未来
科学と技術
長谷川眞理子(日本芸術文化振興会理事長/元総合研究大学院大学長)
人類の進化がもたらした現在の科学技術文明を、われわれは当然のごとく享受し、消費するばかりで振り返りを怠っている。そのことについて、人類学の立場から問題提起をするのが総合研究大学院大学長の長谷川眞理子氏だ。発展する科学技術は私たちをどこに連れていくのか。技術の原動力である欲望自体は、誰にも精査されないまま放置されていいのだろうか。(全3話中第3話)
時間:10分56秒
収録日:2017年10月18日
追加日:2018年1月21日
カテゴリー:
≪全文≫

●100万年かけて70種類の道具しか作らなかった人類


 この図は、用途別の石器の種類がどのくらいあったかを、200万年ほどのスパンで見たものです。

 石器としてはじめに出てくるのは「オルドワン」というモノです。単に石と石をぶっかいただけなので、専門家が見ないと本当に石器かどうかは分からず、これが1種類から5種類ほどしかない時期が、ずっと続いてきました。

 200万年ぐらい前から出てきたのが「アシュレアン」です。用途別に5~10種類ぐらいになりましたが、50万年ほど前までは、これ以外に道具はありませんでした。やがて「ムステリアン」の時期になると、用途別に40種類ほどに分かれ、後期旧石器の時代に入ると、70種類ほどになります。

 それにしても、とても少ないでしょう。違う用途に使うものを、別々の形や機能を持つ別のモノとして作ることに、これほどの時間がかかっているのです。100万年という時間をかけて、やっと10種類から70種類になっていったのです。


●産業革命以降ドッキングした科学と技術


 もちろんこれは石器だけの例ですから、着るものや住まいなど、木でできていたりして形に残らない道具もたくさんあったでしょう。それにしても人類は長い間、およそ100種類程度のモノを使って、生きてきました。

 やがて、そこに科学技術が結び付いていきます。しかし、前回お話ししたように、科学と技術は目的が違い、起源も違います。科学は「知りたかった」、技術は「便利なモノをつくりたかった」、その目的と欲求のおおもとも違うわけで、「知りたい」と思うことと、「何か作って、楽をしたい」というのは、全然違います。

 それが結び付いたのは近代科学以降です。特に産業革命以後になると、科学で解明された原理や法則を利用すると、従来の試行錯誤とは違って、画期的な速度で技術革新ができることが分かってきました。また、産業革命以後の社会は強く経済発展を求めたため、イノベーションに対する要請もあったわけです。そこで、科学と技術は本当に一つに結び付いて、日本語などでは「science and technology」の「and」もなしに、「科学技術」の一語になってしまったわけです。


●人類史全体から見た「技術革新」の瞬間性


 しかし、これは本当に最近のことです。600万年前から今までを一筋の時間軸にすると、20万年前にわれわれホモ・サピエンスが出てきました。その...

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