進化心理学とは何か?~生物進化と心
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ヒトの脳は進化の産物としての臓器である
進化心理学とは何か?~生物進化と心(2)行動主義から進化心理学へ
長谷川眞理子(総合研究大学院大学名誉教授/日本芸術文化振興会理事長)
心理を物理学的に統合しようとした極致として、自由意志はないとしたのがスキナーの「行動主義」である。こうした方向に進む心理学に対して、1980年代末から進化心理学の動きが新しく始まる。その概要を、総合研究大学院大学長・長谷川眞理子氏にご案内いただく。(全4話中第2話)
時間:12分14秒
収録日:2018年2月14日
追加日:2018年5月30日
カテゴリー:
≪全文≫

●動物や人間の自由意志を否定したスキナーの行動主義


 動物やヒトのこころと行動の関係を物理的に統合したいという考えの一つの極限として、「行動主義(Behaviorism)」というものがあります。これをつくったのは、ハーバード大学の心理学教授だったB.F.スキナーという人です。行動主義学派は非常に大きな勢力となり、1970~80年代まで大きな学派として実に多彩な成果を挙げました。

 行動主義の見方では、動物や人間の行動は過去の条件付けによるものです。過去に起こったことで学習をして、良かったことは行うが、悪かったことは行わなくなるとスキナーは述べています。

 だから、自由意志というものはないと彼は言います。過去に楽しかったり、いい結果をもたらした行動はまた行う。過去に悪い結果がもたらされた行動はもうしない。それを繰り返していくと、ある人間ができたり、ある動物ができたりする。人や動物の行動は、心の中の「これをやりたい」と望む自由意志によってなされているわけではなく、行動とその結果が非常に重要なのだというのです。

 彼の方針は、脳の中やこころをブラックボックスとして切り捨てることでしたが、研究パラダイムとしては非常にいいものでした。行動を見て、それがいい結果だったか悪い結果だったかを観察します。また、実験で利用した「スキナー箱」も有名になりました。バーを押して、間違っていたら罰を受け、正しければ餌が出てくるものです。これにより動物に学習をさせ、動物がどう学習するか、行動と結果を分かりやすく見てとれるようにしたのです。痛いのか餌が出てきたのかだけで判断すればいいので、とてもいい、簡単なパラダイムです。


●1980年代末から進化心理学の動きが始まる


 こうしたことで分かったことはたくさんありますし、学習に関する理論もたくさんできました。しかし、これらの研究では「生物としての脳みそ」や「生物が生きる環境」などは考えていません。このような生物進化をまったく考慮しないタイプの心理学が一つの極限として現れ、長く伝統として続けられました。

 しかし、ジョージ・ロマニスとチャールズ・ダーウィンの考え方が消えてしまったわけではありません。これから紹介する二人は1989年頃から論文を出し、90年代には著作を発表しています。その頃から、生物である人間の進化を考慮に入れれば、もっとよく脳みそやこころを考...

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