量的緩和で日本経済の体質改善は果たせるか?
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
大切なのは量的緩和で買った時間で日本の将来を考えること
量的緩和で日本経済の体質改善は果たせるか?
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
不況下において、世界中で量的緩和政策がとられ、日本でも大規模な量的緩和を推進してきた。この人類にとってはいわば未知の領域において、日本が手に入れたものとは何なのか? そして、日本はそれを今後の経済政策にどのように生かしていくべきなのか? 曽根泰教氏が量的緩和政策を鋭く分析する。
時間:8分13秒
収録日:2014年5月28日
追加日:2014年6月26日
カテゴリー:
≪全文≫

●証明されていない新しい世界で試行錯誤するような大規模量的緩和


―― 貿易収支の赤字は、輸出総量が増えずに、為替レートが2、3割、円安になっているので、莫大な額で定着していくかと思います。また、原発を動かそうとしても、そう簡単には行かないと思います。一方で、世界の景気が新興国、中国を中心に縮小していて、アメリカも「言われているほど良くない」ということがだんだん分かってくると、現状4カ月連続の経常収支の赤字が定着する時期が来る。そうすると、もう一回、財政問題が再燃して、どこかのタイミングで金利が急騰するリスクが増えてくる感じがしています。

そうなると、全く期待を抱かないような状況下で、国債価格の暴落ということと相まって日本の金利がゼロ金利から上がっていく。そのことで、市場金融が回復するというシナリオのほうが正しいのではないかというように、最近私は考えているのですが、いかがでしょうか。

曽根 金融学者にとって、金利が効かない世界は、やはり説明が非常に難しいのだと思います。金利があるから成り立っていた。ところが、ゼロ金利に近いところに収斂してきてしまう。また、日本だけではなくて、海外でも量的緩和やマイナス金利を始めたり、あるいは、中央銀行がいろいろな債券を買い込むなどして量的緩和が行われる。こういった現象は、まさしく証明がされてない新しい世界に入り込んで、試行錯誤しているようなもので、一見すると良く見えるものも、その裏には中央銀行の負債がたまっているのです。バランスシートを膨張させているわけです。

ですから、そこの問題は、理論を開発するのか、現実が先に行くのかよく分かりませんが、ある意味で未知の領域で、失敗すればかなり取り返しのつかないことが起きるのではないでしょうか。また、成功しても今まで通りというところに今はきているわけですから、日本だけではなくて、世界中が難しいことになっているように思います。


●インフレ目標政策の真の目的は経済の循環構造の転換


―― イエレンは金利をなかなか上げられないと思いますが、金融緩和の縮小に向かって確実に進み始めています。イギリスも完全にそうですね。EUは同じようにやっている時に、一周遅れで、とてつもない規模の金融緩和を始めて、その結果として得たものが、貿易収支の大赤字でした。

また、輸出企業のサプライチェーンがすでに...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教

人気の講義ランキングTOP10
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
認知バイアス~その仕組みと可能性(1)認知バイアス入門
誰もが陥る「認知バイアス」…その例とメカニズム
鈴木宏昭
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫