●50年間、列車事故による死傷者ゼロ。「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則の確立という鉄道革命の結実
今年2014年は、東海道新幹線開業からちょうど50周年になります。その話から始めたいと思います。
東海道新幹線は、ある意味で鉄道の革命だったと思います。どういう革命か。従来の鉄道は、同じ線路の上をさまざまな列車が走っています。通勤列車、急行列車、特急、それから貨物列車。さまざまな速度、重さ、長さ、停車パターンの列車が入り混じって走っています。これはある意味で、線路の容量を非常に非効率に使っているということになります。東海道本線の輸送能力が限界になり、新しいバイパスを作る必要が生じたときに、高速旅客列車だけのための専用線を作ろうと考えました。そうすると線路の使用効率は非常に高くなるわけです。また、在来線のほうも、速度が突出して速いものが抜けることによって比較的近い速度域の列車が走るようになるので、効率がよくなります。そのような高速旅客列車専用線を建設しようと考えました。それは物理的にも法律的にも厳重に守られた空間であって、他のものは一切入ってくることのできない環境の中で、ATC(Automatic Train Control=自動列車制御装置)と列車集中制御装置で絶対衝突をしないような列車運行を行います。「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則を確立したのが東海道新幹線で、世界で初めての試みでした。その結果、東海道新幹線は今日まで50年の歴史の中で列車事故による旅客の死傷ゼロという完全な安全記録を維持してきました。これは大変すばらしい実績です。
●東京~大阪間をメガロポリス化した巨大経済圏の誕生
そうした「Crash Avoidance(衝突回避)」の原則に基づく日本型高速鉄道システムによって、その他に何が可能になるかというと、まず衝突する心配がありませんから、車両の軽量化ができます。そして軽量化されるということで、エネルギー消費が非常に効率的になります。環境に極めて優しい仕組みになります。と同時に、軽量ですから、線路構造物に対するダメージが少なくて済み、保守費も安く済みます。同時に、軽量であり、また動力が各車両に分散されていること、動輪の数が多いこともあり、加減速性能が高い。その結果、高頻度列車運転が可能であるということに...