政策誘導が困難な「少子化・高齢化・グローバリゼーション」
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
非婚化の時代に「結婚しろ」と政策誘導できるのか?
政策誘導が困難な「少子化・高齢化・グローバリゼーション」
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
例えば「結婚」や「出産」という最も私的なトピックが、「晩婚・非婚・少子化」という社会問題に直結するところに、現代の課題解決の難しさが潜む、と曽根泰教氏。従来のトップダウン式の施策は用をなさない。イノベーションや制度改革、政策デザインが必要とされるゆえんだ。衆知を集めた先進事例を拓くことは、日本が世界に貢献する道にもつながる。
時間:5分55秒
収録日:2014年5月28日
追加日:2014年7月10日
≪全文≫

●政策誘導のできない「少子化・高齢化・グローバリゼーション」


―― 先生がおっしゃった話で印象的だったのは、今の日本の問題は、少子化と高齢化とグローバリゼーションの三つのファクターがなければ、非常に簡単だったというところです。この三つの要素が加わったことによって、問題の解の難しさが違ってきてしまっている。全くその通りだなと思いました。この三つによって、政策誘導は非常に難しくなりましたよね。

曽根 例えば少子化の傾向を変えて、人口増加にすることができますか。これは、確かに政策としてはあります。ですが、子どもを産みたいとか要らないとか、一人でいいとかいうのは個人の選択の話です。それを「二人にしろ」というのは、中国の一人っ子政策と同じことをやりたいのかということですよね。

 それから、地方から東京へ出てくる人をせき止める。それは農村戸籍と都市戸籍を分けてしまうことです。そんな中国と同じことができますか、ということです。問題は、確かに人口は多いほうがいい、少子化ではないほうがいいですが、それを具体的な政策にできますかというところです。

 グローバル化の問題にしても、グローバル化を止めることは、もう無理ですよね。仮にグローバル化がよくないとしても、日本はこれによって稼いできた部分は大量にあったわけです。つまり、農業や中小企業のみなさんも、一方的にその波をかぶった被害者だと言えるわけではない。グローバル化によって日本は世界に出ていったわけですから、その部分も考えないといけません。

 それから、高齢化についても、一番の課題は医療費のかかり方が無制限なままでいいのかというところです。長寿であるのはおめでたくていいことなのですが、無制限の負担には誰しも耐えられない。

●「国の政策だから、結婚しなさい」と言えるか?


曽根 やることがたくさんあって、どれも難しいというのは、個々人の選択に依拠するものだからです。しかし、全体で見ればやはり少子化は問題にせざるを得ないというこの矛盾は、中国的な方法ではおそらく解決できないでしょう。中国でさえ、一人っ子政策は大変だということで、一人っ子同士の結婚であれば次の代は一人っ子でなくていいという具合に政策変更がなされてきているのです。

 しかし、だからといって放っておけば人口は少なくなる一方です。しかも、結婚もしない。したとして...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
財政問題の本質を考える(1)「国の借金」の歴史と内訳
いつから日本は慢性的な借金依存の財政体質になったのか
岡本薫明
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
日本人が知らない自由主義の歴史~前編(1)そもそも「自由主義」とは何か
消極的自由と積極的自由?…なぜ自由主義がわかりづらいか
柿埜真吾
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
日本のエネルギー政策を「デジタル戦略」で大転換しよう
岡本浩

人気の講義ランキングTOP10
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(3)医療の大転換と日本の可能性
近代医学はもはや賞味期限…日本が担うべき新しい医療へ
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(3)認知バイアスとの正しい向き合い方
知ってるつもり、過大評価…バイアス解決の鍵は「謙虚さ」
今井むつみ
編集部ラジオ2025(28)内側から見た日米社会の実状とは
島田晴雄先生の体験談から浮かびあがるアメリカと日本
テンミニッツ・アカデミー編集部
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫