「ダヴィンチ」は医療経済にどのような影響を与えるか
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
低集約・非効率―特殊な日本の輸入医療機器事情
「ダヴィンチ」は医療経済にどのような影響を与えるか
堀江重郎(順天堂大学大学院医学研究科 特任教授)
世界に比べて特異な日本の輸入医療機器事情。低集約性、非効率性の問題。そして保険診療のカベ――。外科手術史を変える手術ロボット「ダヴィンチ」の普及問題から見えてくる、日本の医療経済システムの実態とは。
時間:10分25秒
収録日:2014年5月2日
追加日:2014年7月31日
≪全文≫

●普及が進む手術ロボットダヴィンチと医療経済


 さて、先日は、手術ロボットダヴィンチが可能にした新しい外科手術のイノベーションについて、お話をさせていただきました(参照:ロボット手術が拓く外科イノベーション「ダヴィンチ」)。今日は、この手術ロボットダヴィンチが、医療に、あるいは医療経済にどういう影響を与えるかについて考えてみたいと思います。

 現在、この手術ロボットダヴィンチは、米国ではもうすでに1500台近い台数が導入されています。日本では、導入から2年経った現在の導入数は170台で、アメリカの10分の1の規模で普及しています。隣国の韓国では現在約50台です。もともとは韓国のほうが日本よりも先にスタートをしていましたが、現在、台数だけにおいては、日本のほうが韓国を上回っています。さまざまな市場規模、経済規模、その他を考えますと、日本においては、おそらく300台近いダヴィンチが今後導入されていくのではないかと言われています。

●日本の輸入医療機器はなぜ高いのか


 現在、日本では、保険診療としてこのダヴィンチ手術を行えるのは、前立腺がんに対する前立腺を摘除する手術だけにとどまっております。しかしダヴィンチ手術は、前立腺がんの他にも、膀胱全体を摘除する、あるいは腎臓を部分的に摘除する、そして子宮や卵巣、大腸、整形外科、甲状腺、そして心臓外科等、海外ではほとんど全ての領域で可能になっておりますし、また例えばアメリカでは、通常の開腹手術をしても、ダヴィンチで手術をしても、手術の料金、治療費は全く変わりません。

 なぜ、日本とアメリカ・ヨーロッパ・韓国におけるこうした相違の問題が起きているのかを少し考えてみたいと思います。

 アメリカ、ヨーロッパ、韓国では、ダヴィンチの価格は1台およそ2億円弱です。ところが、日本では現在約3億6000万円と、2倍弱の費用がかかってしまっています。

 実はこういった状況はダヴィンチに限ったことではなく、海外から輸入されるほとんど全ての医療機器は、通常、例えばアメリカに比べて、およそ2倍から3倍の費用がかかっていることが指摘されています。これは例えばTPPに代表されるような関税が問題なのかというと、そうではありません。意外なことに、医療機器の輸入に関して、関税はほとんどかかっていません。

 では、なぜ日本において輸入医療...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「健康と医療」でまず見るべき講義シリーズ
アンチエイジングのための「5:2ダイエット」
「5:2ダイエット」活性酸素を減らしてアンチエイジング
堀江重郎
知られざる「脳」の仕組み~脳研究の最前線(1)脳科学と「ミクロのマクロの隔たり」
脳が生きている、死んでいるとは?最新研究で迫る脳の秘密
毛内拡
睡眠:体、脳、こころの接点(1)睡眠とは?
なぜ睡眠は生きるために必要?脳にある覚醒中枢と睡眠中枢
尾崎紀夫
歯科の健康づくり(1)「噛める」ようになると人が変わる
噛み合わせや歯の健康が人間の健康にとっていかに大事か
河原英雄
驚異の味噌パワー
味噌で免疫力向上、がん抑制、放射能除去…発酵食品の効果
小泉武夫
飽食時代の「選食」のススメ(1)選食の提唱と「食の多様性」
肥満、認知症、低栄養…飽食の時代に大事な「選食力」3カ条
堀江重郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(39)上野誠先生の万葉集講義と現代
【10min解説】万葉集に学ぶ「公務員倫理法」の大失敗?
テンミニッツ・アカデミー編集部
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(6)ピョートル大帝の宗教改革
王座に乗った革命家・ピョートル大帝の「宗教改革」と、ソビエト時代のロシア正教の「弾圧」と「利用」の実情
上月豊久
「良き対話」とは?――哲学から考える(1)対話とは何か――会話・説教との違い
「良き対話」のヒントを哲学から考える…「対話」の大前提とは、そして「会話」「説教」「場回し」とは何が違うのか?
納富信留
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
『源氏物語』を味わう(3)形容詞からの楽しみ方
美しい形容詞の使い分け…『源氏物語』の表現を味わう
林望
「満洲」から考える日本とアジア(9)アヘンの実態と満洲開発
満洲国の開発とアヘン問題…アヘンが資金源となったのは事実だが「同時代の世界」と比較せねば真実はつかめない
宮脇淳子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(1)国守・大伴家持と地方社会の日常
『万葉集』でわかる奈良時代の貴族と地方豪族の関係と日常…歌人・大伴家持の歌に秘められた国守時代の苦労話
上野誠