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タバコは体を錆びさせる!大事なのは活性酸素の抑制

タバコを吸う人の健康法~錆びにくい体づくり

堀江重郎
順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授
情報・テキスト
百害あって一利なしと言われるタバコ。いったい何がそんなに悪いのか?また、それをカバーする方法はあるのか?堀江重郎氏が、タバコが人体に及ぼす影響を解説し、愛煙家のための健康法を伝授する。
時間:11:20
収録日:2014/11/07
追加日:2015/01/14
≪全文≫

●がんより怖い?「体を錆びさせる」タバコの害


 皆さん、こんにちは。順天堂大学泌尿器外科の堀江重郎です。今日は、タバコのことについて考えてみたいと思います。

 この図に出てくるような“マールボロ・カントリー”、あるいは“ロンサム・カウボーイ”と言ってもいいのですが、こうしたカウボーイが一人でタバコをくゆらす姿は、“格好いい”とされています。あるいは、チャーチルのように、葉巻を吸うことによって、重厚な印象や、またある意味で人に威圧感を与えるような要素もあります。こういったことから、シガー、シガレット、葉巻なども含めて、「タバコ」は、男性性というものの中で一つの大きな役割を果たしてきたことは事実だと思います。

 反面、今、タバコは、全世界で禁煙を進めるべきだという激しい圧力にさらされていますし、また、私も医療従事者の一人として、タバコをすべからくやめる、禁煙することが大事だと考えています。

 しかし、そうは言っても、やはりタバコを吸う人は結構いらっしゃると思います。そういう人に、タバコをやめましょうと禁煙を勧めることももちろん大事ですが、そういったアクションに移る前に、今日からでもできる健康法を考えてみたいと思います。

 なぜタバコをやめた方がいいのか。これは、大きく分けると二つあります。一つは、ご自身のため。もう一つは、他人のためです。他人の方は、比較的分かりやすいかもしれません。本人はタバコを吸わないのに、周りのタバコの煙を吸い込むことによって、二次的に何かの病気のリスクが高まる。これがいけないということはよく分かります。

 では、タバコを吸うご本人についてはどうでしょうか。よく言われるのが、肺がんになる可能性が高い。あるいは、タバコによってがんになる可能性が高いということです。皆さんはご存知かもしれませんが、しかし、いま現在お元気な40代、50代の方は、肺がんとタバコとの関係が、必ずしも密接に、ピンとはこないのではないかと思います。

 ところが実は、タバコの一番大きな害は、「がん」ではありません。体を錆びさせることなのです。


●加齢臭も、体の“錆び”が原因だった!


 錆びるというのは、これは、例えば、リンゴを切るとその切り口が茶色になってくるように、また、カルメ焼きやコーラも皆そうであるように、糖分が酸化することによって茶色になる“メイラード反応”という化学反応の一種です。あるいは、鉄が錆びると、やはり赤茶色になります。これを酸化すると言います。この錆びとはすなわち酸化ということなのですが、興味深いことに、われわれの体の中でもこの酸化反応が起きています。

 酸化反応は、簡単に言いますと、活性酸素という非常に反応性の高い酸素によって、錆びるということです。われわれが空気を吸って呼吸をしている酸素は、化学的に反応性が低い酸素です。ところが、何らかの状況下でできてくる活性酸素は、非常に反応性が高い。簡単に言うと、錆びさせてしまう。体の中の分子、例えば、タンパク質や、DNA、脂肪、こういったものを錆びさせることによって、細胞の中の一つ一つの分子の機能を落としたり、あるいは、DNAが錆びてしまうことでDNAの中に異常が起きたりして、このDNA異常は、実はがん化に関係してきます。活性酸素によるこうした分子・細胞の損傷を、酸化ストレスと言います。ここで言うストレスとは、メンタルなストレスではなく、酸化を受けやすい環境にいるということです。

 では、この活性酸素はいつ出てくるかというと、ごはんを食べるときです。われわれは、ごはんを食べてエネルギーをつくります。ですから、寒いときにごはんを食べると、体が暖まってきます。こういった熱を出すエネルギーをつくるためには、われわれは食事を摂らなければならないのですが、エネルギーの元であるATPという物質をつくるときに、同時に活性酸素も出てくる仕組みになっています。

 この作業は、体の中にあるミトコンドリアという非常に不思議な細胞の中の細胞、一種のエネルギー工場で行われています。このエネルギーをどんどんつくったときにできる活性酸素は、赤ちゃんのときには瞬間的に分解してしまいます。それが、だんだん、これを分解する速度が遅くなってくるのですね。

 よく加齢臭などと言いますが、その原因は、実はこの活性酸素です。「お父さん、臭い」と言われてショックを受けたという経験のある人もあると思いますが、逆に言いますと、赤ちゃんはいい香りがします。活性酸素がほとんどないと、赤ちゃんのような匂いになるのですね。ところが、体の中の脂肪分が酸化する。平たく言えば、マヨネーズをお皿に置いて2、3日経ち、白くカピカピになってきたのを嗅いでみるとちょっと臭い匂いがするのと同じように、体の中の脂肪分が錆びてし...
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