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「脳の性分化」に作用~男性ホルモンの特徴と多彩な役割

やる気に関係するホルモン「テストステロン」

堀江重郎
順天堂大学医学部・大学院医学研究科 教授
概要・テキスト
やる気に関係するホルモンがある。男性ホルモンとも呼ばれる「テストステロン」だ。いつ、どのように、なぜそのような働きをするのか。不足している人はどうしたらよいのか。男性だけに関係するのか。堀江重郎氏が最新の知見を語る。
時間:12:16
収録日:2014/05/02
追加日:2014/08/07
カテゴリー:
≪全文≫

●人間の気前を良くしてくれるホルモンがある


 皆さん、こんにちは。泌尿器科医の堀江重郎です。

 今日は、やる気に関係するホルモンについて少し考えてみたいと思います。まず『ネイチャー』という有名な科学誌で発表された、大変知られた実験を紹介します。

 二つの集団の片方に、あるホルモンを飲んでいただき、もう片方には、効果のない偽物の薬、専門用語でプラシーボ(偽薬)と呼ぶものを飲んでいただきます。ですから、後者の集団も自分たちは薬を飲んでいると思っていますが、実際にはその効果はありません。

 この二つのグループの方々が、ボランティア活動にどのぐらいお金を出すかという調査を行いました。そうすると、このグラフを見ていただくと分かりますが、「ホルモンX」を服用した方々のほうがボランティア活動により多くの寄付をするという結果が出ました。

 ホルモンとは、体内の特定の臓器で作られ、非常にわずかな量で体の隅々に作用するものです。例えば、ご飯を食べたときに血液中の糖分をコントロールするインシュリンや、甲状腺ホルモン、副腎皮質ホルモンなども薬になっていますからご存知の方がいらっしゃると思います。では、この気前を良くしてくれる「ホルモンX」とは、一体何でしょうか。

●テストステロンは、男性を形づくるホルモン


 正解は「テストステロン」、俗に言う男性ホルモンです。なぜこれを男性ホルモンと言うかというと、そもそもお母さんのお腹の中で、このホルモン量が高くなるとおちんちんができるからです。人間の基本的な体は女性ですが、男性の染色体すなわちY染色体があると、胎児のときに自らテストステロンを増やし、おちんちんを持って生まれてくるのです。

 また、2、3歳になりますと、男の子は車のおもちゃで遊び、一方の女の子はお人形で遊んだりします。このようにしてさまざまな面で、より男の子っぽい考え方と女の子っぽい考え方に分かれていきます。この「脳の性分化」に作用するのがテストステロンで、この時期の男の子はテストステロン値が高まっています。

 小学校の時代は、実は男の子も女の子も、このホルモンの値はあまり違いがありません。しかし、いわゆる思春期になると、男の子たちはテストステロン値が一気に上がり、がっしりとした大人の男の体になっていきます。一方、このホルモンが思春期に働かないと、ピーターパン...
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