●結婚年齢の上昇と不妊症の増加
皆さん、こんにちは。順天堂大学医学部の堀江重郎と申します。今日は、男性にとって大変重要な話題である精子の力、精子力についてお話をさせていただきます。
これをお聞きになっている皆さまも、よく不妊症という言葉を耳にされると思います。結婚された方のうち、だいたい10組に1組はお子さんができないというのが普通なのですが、近年、男女ともに結婚する年齢が上昇していることに伴って、お子さんができない方も増えてくるということが指摘されています。最近、出生動向基本調査という非常に面白いデータが出たのですが、これを見てみますと、奥様、妻の方が年上である方の割合が、この10年間で年々増えてきています。少し古いデータですが13年前の2002年には、約9パーセント程度の方は、奥様の方が年上の年上婚です。ということで、おそらく現在では、10パーセントを超えているのではないかと思います。
●35歳からの精子力の衰え
女性が35歳を過ぎますと、卵巣から出てくる卵子が老化してくるため、妊娠は難しくなるということがよく言われています。一方、男性の場合、かなりご高齢になってもお子さんをつくるという元気な方もいらっしゃいます。そういったことから、男性に関しては、精子が持つ妊娠させる力は年齢とあまり関係ないのではないかという考えも、従来はありました。しかし、最近の研究がいろいろ進んだ結果、やはり男性も女性と同じように、35歳から40歳を過ぎてくると、精子が妊娠をさせる力はかなり落ちてくるということが分かってきました。
この精子というのは、1CCあたりに非常にたくさんの数、何十万という精子がいるのですが、精子の機能を見るために、専門医はまず精子の数や実際に運動している精子の割合、最後に精子の形が完全なものか、一部不完全な形のものもあるのですが、そういった基準で判断をしています。
それで見ていくと、やはり年齢とともにまず濃度が薄くなってきますし、運動している精子の数も減っていきます。また、完全な形をしている精子の数も減ってくる。この三つが減ってくるということが分かってきました。
●健康な精子をつくるために大切なもの
そして健康な精子をつくっていくために大切なものとして、男性ホルモンであるテストステロンがあります。このテストステロンがないと、...