トルコ大統領選とISIL
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
トルコ大統領選とISによるイスラーム国家の樹立
トルコ大統領選とISIL
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
10MTVではおなじみの歴史学者・山内昌之氏が、2014年6月22日から7月5日のトルコ研究調査から戻られた。クリミア半島と中東。今最も激震する両地域に挟まれているのが、トルコ共和国である。現地の報道機関や市民の声はどうなっているのか。中東の歴史と現実を知り抜いた山内氏ならではの現状分析をうかがってみた。
時間:19分50秒
収録日:2014年7月17日
追加日:2014年8月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●8月に行われる大統領選が、トルコ中の話題


 皆さん、こんにちは。前回あるいは別の機会に申し上げたかもしれませんが、6月から7月にかけてトルコに行ってまいりました。

 私のトルコ滞在中、歴史と政治に関わる一番大きな事件は、何と申しましても8月に行われるトルコ共和国の大統領選挙に関する話題でした。

 選挙にはエルドアン現首相が立候補するのと同時に、他の二人の対立候補も立候補することになりましたが、特に注目されるのは、HDP(人民民主党)という政党からデミルタシュという人物が大統領に立候補する声明でした。

 デミルタシュ氏とはどういう人かというと、クルド人です。所属政党であるHDPは、クルド人の政党に他なりません。クルド人の政党から候補者が出ることは、第一に、この人物がトルコの中のクルドの政治運動の代表であり、象徴的存在であると印象づける意味を持っています。


●クルド人の政党から大統領候補が出る意味


 しかし、ある意味でそれ以上に大事なことは、HDPがクルド人だけのエスニックな民族政党であることから脱皮して、トルコ国民の政党、トルコ共和国の中の一つの政党という位置づけで自らを印象づけようとしている点です。

 この政党の支持者はクルド人だけではありません。トルコ人の中でも、特に左翼的な考えの人々、社会主義者や行動主義者といった人たちもまた、この党の路線に賛成していると伝えられています。

 大統領選自体は、現首相であるエルドアン氏が新大統領ということで成立するものと見られています。その場合、一つの目安はデミルタシュ候補がこの選挙において10パーセントないしそれ以上の得票率を獲得できるかどうかです。そうなると、エルドアン氏や新政府との交渉においてクルド人は、非常に有利な立場を得るのではないかとささやかれています。


●もう一つの話題はISILによるイスラーム国家の樹立


 もう一つの大きな関心事。これはトルコにいたとき、そして日本に帰ってきてからの現実ともつながります。クルド人問題とも関連しますが、ISILあるいはISISという組織が国をつくったことです。

 ISILは、「イラクとレヴァントのイスラーム国家」の略です。レヴァントはシリアを意味します。場合によってISISと書かれることもあります。最後のSは、アラビア語の「シャーム(アッシャーム)」...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
緊急提言・社会保障改革(1)国民負担の軽減は実現するか
国民医療費の膨張と現役世代の巨額の「負担」
猪瀬直樹
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(1)内戦と組織動乱の構造
カーク暗殺事件、戦争省、ユダヤ問題…米国内戦構造が逆転
東秀敏
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎

人気の講義ランキングTOP10
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(7)ジャパン・アズ・ナンバーワンの弊害
ジャパン・アズ・ナンバーワンで満足!?学ばない日本の弊害
島田晴雄
プロジェクトマネジメントの基本(1)国際標準とプロジェクトの定義
プロジェクトマネジメントとは?国際標準から考える特性
大塚有希子
歴史の探り方、活かし方(7)史料の真贋を見極めるために
質疑編…司馬遼太郎の「史料読解」をどう評価する?
中村彰彦
熟睡できる環境・習慣とは(2)酒、コーヒー、ブルーライトは悪者か
ブルーライトは悪者か?近年分かった「第3の眼」との関係
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
習近平―その政治の「核心」とは何か?(1)習近平政権の特徴
習近平への権力集中…習近平思想と中国の夢と強国強軍
小原雅博
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(1)サイバー・フィジカル融合と心身一如
なぜ空海が現代社会に重要か――新しい社会の創造のために
鎌田東二
経験学習を促すリーダーシップ(3)成功の再現性と教え上手の指導法
教え上手の指導法に学ぶ!成功の再現性を高める4ステップ
松尾睦
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一