●税と社会保障の一体改革は非常に大きな成果
今日は、「政治記者の考える政策課題」の第二弾で、社会保障の話をしたいと思います。民主党・野田政権の最終盤で、税と社会保障の一体改革が自民党、公明党も加えた3党によって合意され、消費税が今年の4月に5パーセントから8パーセントに引き上げられ、さらに来年の10月には8パーセントから10パーセントに引き上げられることが決まりました。また、それによって増えた税収で社会保障を充実させることも決まっており、現在、さまざまな法改正を伴いながら実現に動いています。
合意当時は大いに批判されましたが、私は、消費税増税を3党が合意に達したことは非常に大きな成果だったと思います。日本の政治もようやくそのような成果が出せるほどに成熟したのだと感じています。
安倍政権とともにアベノミクスがスタートし、金融政策から始まって、財政政策、成長戦略という「3本の矢」が用意されました。大胆な金融緩和を行い、それから大規模な財政出動を実施して、とにかくデフレ脱却を目指そうとする発想は安倍政権の手柄ですが、実は事前に消費税増税のプランが固まっていたからこそ、安倍さんがこのような大胆な政策を打つことができたという側面もあります。ですから、アベノミクスは安倍さん独自の成果とは必ずしも言えません。政策は連動していますから、前後のつながりも考えておく必要があるのです。いずれにしても、そのようにして税と社会保障の一体改革が動き出しました。
●現在の社会保障は、国の借金で維持されている
消費税が1パーセント上がると2.5兆円ほど税収が増えますから、5パーセント増で12兆円くらいの財源ができます。それを社会保障に充てるというのが税と社会保障の一体改革の方針です。それ自体はけっこうなことですが、実は日本の社会保障費は国のお金だけで約30兆円に上ります。社会保障は大きく分けて年金、医療、介護、それから子育ての4分野がありますが、それらに対して国が30兆円ほどの支出をしています。さらに、実は都道府県や市町村、企業、本人の窓口負担を全て合わせると、毎年100兆円くらいの支出がなされています。大量のお金が社会保障につぎ込まれているのです。
次に歳入のほうを見ると、国の歳入全体で税収が約44兆円あります。あとの40兆円ほどは借金です。8パーセントの消費税でだいたい20兆円の税収ですから、現在の消費税分を全て社会保障費に充てても、国の社会保障費30兆円に届かないのが現実です。消費税が15パーセントになって、ようやく国の社会保障費をすべて消費税で賄うことができる計算になります。これまでも今も、実は国の多額の借金によって社会保障が維持されているのです。
われわれは年金、医療、介護、子育てに関してさまざまなサービスを受けていますが、ざっと見て、その4割から5割が国の借金で賄われていると言ってもよいと思います。つまり、われわれが日々享受している社会保障サービスは、子どもや孫の世代に借金を先送りする制度によって成り立っているのです。人によっては、子どもや孫のクレジットカードを使って社会保障を維持している人もいますけれど。
やはり、そこはわれわれも、自分たちの受けている社会保障くらい、自分たちの税金で払うことを考えなくてはならないのではないでしょうか。税金で社会保険料を賄うのなら、やはり消費税に頼らざるを得ないでしょう。私はそのような理由から、10パーセントの消費税は当面やむを得ないと思っています。消費税から社会保障の財源をきっちりと確保して、次の世代になるべく借金を残さないようにすることは、一つとても重要なことです。
●国民年金や医療費の制度を大きく見直す必要がある
もう一つ考えなくてはならないのは、社会保障も戦後70年続いてきた中で少しずつ整備されてきているということです。例えば年金は、厚生年金と共済年金の負担と給付のバランスを取りつつ、少しずつ負担を上げ、少しずつ給付を下げるという微調整をしています。
しかし、問題のある制度も少なくありません。例えば、年金制度の中では、国民年金制度がそうです。国民年金制度は、毎月1万4千円ほどを支払い、25年経つと受給資格ができて、40年経つと満額で月6万円くらいの年金をもらえるという仕組みです。これは当初、農家で働くおじいさんやおばあさんを対象に想定していました。彼らは70歳、80歳になっても近所で田畑を耕していれば、隣近所と交換などもしたりして食料はそれなりに賄えます。もちろん家もありますから、その上で子どもや孫にあげる小遣いの分として月に一人6万円、二人で12万円くらいの年金がちょうどよいだろうと考えて設計されているのが国民年金制度なのです。
ところが、今はそのよう...