政治記者の考える政策課題
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
現在の財政問題は1980年の衆参同日選挙の悲劇から始まった
政治記者の考える政策課題(1)財政
星浩(TBSスペシャルコメンテーター)
 「今や、国の財政破綻すら絵空事ではなくなってきている」。政治記者として約30年のキャリアをもつ星浩氏が、時代とともに移り変わってきた政治記者の役割、そして政策課題の中でも特に重要な「日本の財政問題」の歴史と変遷について、分かりやすく解説する。
時間:9分43秒
収録日:2014年4月4日
追加日:2014年5月29日
カテゴリー:
≪全文≫

●政治記者は政治家や官僚から話を聞くだけではない


 皆さん、こんにちは。朝日新聞の星浩でございます。私は30年ほど政治記者をしておりますので、今日は「政治記者の考える政策課題」という少々真面目な話をします。

 皆さんは、政治記者の夜討ち朝駆けの逸話、国会で政治家に張り付いて歩いている場面、あるいは政治家のところへ取材に押し掛けている姿などをテレビでご覧になったり、耳にしたりしていると思います。ですから、政治記者の仕事とは何かといわれたら、そのようにして政治家や官僚からいろいろな話を聞き出すことを思い浮かべると思いますが、それは半分当たっていて、半分は当たっていません。

 私の経験から言うと、20年くらい前までは、政治記者は政界の有力者や官僚のトップなどから話を聞いて、それをそのまま記事にして世の中に伝えればよかったのですが、今はそうではないのです。


●米ソ冷戦構造と55年体制という安定の終わり


 1945年に戦争が終わってから30年くらいは世の中が非常に安定をしていて、国際社会ではアメリカとソ連の米ソ冷戦構造、東西対決構造があり、日本国内では右肩上がりの経済成長の中で、増えていく税金や資産を分配しさえすればよいという時代が長らく続いてきました。

 そのような米ソ冷戦構造の国内版がいわゆる「55年体制」で、資本主義陣営の日本では自民党が圧倒的な優位を占めていました。社会党という野党があり、彼らは「労働組合の賃金を上げるべきだ」「もっと環境に配慮すべきだ」「さらに社会保障を充実させるべきだ」といった要求はしていたものの、本気で政権をとるつもりはありませんでした。どんどん税金が増えていましたから、ただそれを分配すればよいという比較的運営の楽な政治・経済・財政状況のもと、基本的には自民党が社会党の要求をときどき受け入れながら政権を担当する体制が維持されました。また外交面でも、米ソ冷戦の間はアメリカについて行きさえいれば事足りていたという時代が続いていました。

 しかし、そういう時代が終わりを告げ、経済が伸びなくなった。それから、典型的なのは、1980年代末から1990年代にかけて東西冷戦構造が一気に崩れました。ソ連・ロシアの勢力が弱まり、一時はアメリカの世界一極支配体制になりましたが、それもそれほど長くは続かず、現在の世界はモノもお金もグローバル化...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
日本でも中国でもない…ラストベルトをつくった張本人は?
島田晴雄
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(3)秀吉出世譚の背景
武闘派・秀吉として出世…織田家中で一番の武略者の道
黒田基樹
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(2)民意は本当に反映すべきか
デモクラシーとエリート主義の限界…立憲主義と共和主義
齋藤純一
独裁の世界史~ローマ編(2)見識を育んだ「父祖の威風」
ローマが見識を磨いていくために重視した「父祖の威風」
本村凌二
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
医療から考える国家安全保障上の脅威(1)「非対称兵器」という新たな脅威
フェンタニルの麻薬中毒も意図的な戦略?非対称兵器の脅威
山口芳裕
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎