●若い頃から何になろうと決めるのではなく、どう生きるかを考え出すことが大事
―― 「人生はアクシデンタルに決まる」というところから、今の職業は将来、大体3分の2くらいがなくなってしまい、新しい職業になるというお話でしたね。そんな時代に、自分の息子や娘に「将来こうなってほしい」と言うのは、おかしいのではないかと。
小宮山 それはそうですよ。だって、将来は今、実際に見えないし、どうなるのか分かりませんから。ソニーが今、ベスト400のインデックスから外れましたよね。パナソニックは戻りました。それぐらい変化が激しいのです。ある未来学者の予測によれば、今生まれた人たちの3分の2は、今はない新しい職業に就くことになるだろうということです。
そうすると、今ある職業の3分の2は、将来はなくなるということになります。そのような激しい変化の時に、自分の息子や娘に、何をやれとか、何になれとか、親が言えると思う人の方が僕には信じられないのです。僕にはとてもそんな自信はありません。
自分が今まで生きてきたことを振り返ってみても、例えば小学生の時、僕らの頃は、男の子は皆、野球をやっているというような時代でしたから、ラジオで野球の実況中継を聞いて、長嶋茂雄選手に憧れていました。皆、長嶋になりたかったのです。それで、一生懸命に野球をやるけれども、僕の場合は小学校3、4年ですかね、同級生に水野くんという人がいて、彼の方が野球が上手なのが明らかに分かるのです。そう思ったら、やはり分かりますよね。自分が将来、野球選手になりたいと言ってもなれないということを感じました。
ある会で小泉進次郎さんが同じようなことを言っていました。彼の場合はそれが分かるのが遅くて、高校まで甲子園に行こうと思って野球をやっていたそうで、強い高校だったようです。彼は僕よりもずっと才能があっただろうけれど、同じ神奈川県で、松坂大輔選手が違う高校にいたそうで、「松坂選手が軽く投げていても、僕よりもはるかに球が速いし、伸びがあった」と言っていました。その時に、野球では無理だと思ったそうです。
ですから、高校で感じるか、中学で感じるか、野球なのか、歌手なのか、ピアニストなのか、それは分かりませんけれども、小学校の時に将来何になりたいと言っても、やはりなれないということがどこかで分かっていく。それで、だんだんと自...