【入門】日本仏教の名僧・名著~法然編
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
一枚起請文…法然が最晩年に弟子に説いた教えの内容とは
【入門】日本仏教の名僧・名著~法然編(3)『一枚起請文』
賴住光子(東京大学名誉教授/駒澤大学仏教学部 教授)
讃岐配流から赦免され、京へ戻った法然が死の二日前、弟子源智の願いに応じて記した遺言書が『一枚起請文』とされる。自身の死後、分裂していくであろう弟子たちに向けて、学問や議論よりも「専修念仏」を実践することの重要性を強調した、簡潔で貴重な教えに触れていく。(全3話中第3話)
※インタビュアー:川上達史(テンミニッツTV編集長)
時間:10分42秒
収録日:2020年9月30日
追加日:2021年7月15日
カテゴリー:
≪全文≫

●最晩年、弟子の求めに応じて記された『一枚起請文』


―― 今回は、法然の次の文章に行きたいと思います。これは『一枚起請文』というものですね。まず冒頭のところを読ませていただきます。

「唐土(もろこし)・我朝に、もろもろの智者達の、沙汰し申さるる観念の念にもあらず。又、学問をして念の心を悟りて申す念仏にもあらず。ただ、往生極楽のためには、南無阿弥陀仏と申して、疑なく往生するぞと思とりて申す外には、別の子細候わず。」

賴住 はい、そうですね。まず、「唐土・我朝に」とありますように、中国でも浄土教の教えは非常に盛んでした。中国で盛んだった浄土教の教えが日本に入ってきて、こちらでも盛んになっていったわけです。ですから、中国でも、また「我朝」=日本でも、浄土の教えについて学び、経典などを中心に研究するお坊さんたちはたくさんいました。

 その人たちが「沙汰し申さる」すなわちいろいろと言っているのは「観念の念」だということです。「観念の念」というのは、先ほどから申しておりました「観想念仏」の話です。「その観想念仏のことを私は言っているのではない」と、法然は始めています。

 この『一枚起請文』という文章はどういう種類のものかと申しますと、法然がもう最晩年に入って亡くなる寸前に、自分のお弟子さんから「教えの一番の要点を教えてください」といわれた時に書き残したものと伝えられています。

 この文章が本当にそのとき書かれたものかどうかということについては、文献学的には異論もあろうかと思います。ただ、法然の教えの要点がどこにあったかということは、この『一枚起請文』の中に非常によく表現されていると思いますので、味わって読んでみたいと思います。


●学僧・法然が理論より念仏を重視した理由


賴住 そこでまず言っているのが、「観想念仏の念ではない」という話です。さらに次の「学問をして念の心を悟りて申す念仏」でもないというところで、念仏に対する学問というものがいろいろある中で、細かな議論がいろいろ行われていたことが分かります。

 法然自身は学僧としても非常に有名だった方で、「一切経」を何度も読んだと伝えられています。「一切経」とは、インドや中国でつくられたさまざまなお経を全部まとめ上げたもののことで、膨大な量があります。それを何回...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「哲学と生き方」でまず見るべき講義シリーズ
もののあはれと日本の道徳・倫理(1)もののあはれへの共感と倫理
本居宣長が考えた「もののあはれ」と倫理の基礎
板東洋介
老荘思想に学ぶ(1)力のメカニズム
老荘思想は今の時代に人類の指針となる
田口佳史
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
ヒトはなぜ罪を犯すのか(1)「善と悪の生物学」として
ヒトが罪を犯す理由…脳の働きから考える「善と悪」
長谷川眞理子
禅とは何か~禅と仏教の心(1)アメリカの禅と日本の禅
自発性を重んじる――藤田一照師が禅と仏教の心を説く
藤田一照

人気の講義ランキングTOP10
平和の追求~哲学者たちの構想(5)カント『永遠平和のために』
カント『永遠平和のために』…国連やEUの起源とされる理由
川出良枝
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境に対峙する哲学カフェ…西洋哲学×東洋哲学で問う矛盾
津崎良典
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
渡部昇一の「わが体験的キリスト教論」(1)古き良きキリスト教社会
古き良きヨーロッパのキリスト教社会が克明にわかる名著
渡部玄一
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
健診結果から考える健康管理・新5カ条(1)血管をより長く守ることが重要な時代
健康診断の結果が悪い人が絶対にやってはいけないこと
野口緑