日本の右傾化・保守化について考える
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「戦争しないからいい」ではなく、どう国際貢献するかが鍵
日本の右傾化・保守化について考える
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
日本は今、海外から保守化、右傾化が進んでいると見られている。日本は余裕がなくなり、大人の対応ができない時代になってきたと指摘する曽根泰教氏。なぜ日本は余裕がなくなったのか。今後どうすべきなのか。曽根氏が日本の右傾化・保守化について分析し、日本の進むべき方向性を説く。
時間:14分11秒
収録日:2014年10月9日
追加日:2014年12月24日
カテゴリー:
≪全文≫

●日本の過剰反応が海外からは右傾化的な反応に見える


―― 日本の社会は今、保守化というか、右傾化が非常に進んでいると言われ、その右傾化も歴史研究家の保阪正康さんに言わせると、戦前の空気に結構近いような感じになってきているのではないかということです。朝日新聞の訂正の話も、今まで朝日が果たしてきた良い影響も全て否定しているような感じで進んでいくというのは、あまりよろしくないのではないかというようなことも含めて、結構難しい問題なのですが、保守化、右傾化という今の世相の問題についてお願いします。

曽根 全般的に大人の対応ができない時代になってきました。なぜ大人の対応ができないのかというと、余裕がないのです。

 その余裕のなさはどこに由来するのかというと、日本は経済的にアジアのナンバーワンですが、あらゆる面でアジアのナンバーワンであったというところです。民主化も最初に行いましたし、市場化も最初でした。あるいは、国際社会の中での活躍も最初でした。ところが、今は経済的にアジア諸国から追いかけられ、安全保障上の危機感も生まれています。

 そのようなことから言えば、細かいことも含めて、過剰に反応しているのです。その過剰な反応の仕方が、総じていえば、海外からは右傾化的な反応と見えるのです。


●アジアに対する過剰反応か、アメリカや国際秩序に対する反撃か


曽根 その一番大もとの反応として問われているのは、一体日本は何を守りたいのか、何を主張したいのか、ということです。例えば、第2次世界大戦では、日本はやはり敗戦したのです。しかし、「敗戦した」というところからスタートするのか。「いやいや、そうではない、日本は悪くなかった。戦前の日本もいいことをした」と、そこに戻ってしまうと、これは、戦後の国際秩序に対する大チャレンジなのです。歴史修正主義ともいえるし、あるいは、単にアジアの中の中国、韓国だけではなく、アメリカやヨーロッパ、国連も敵にまわして、「日本はやはり第2次世界大戦では悪くはなかった。太平洋戦争は日本の正義が挫折しただけだ」と、そういう見方をとるかとらないかという点が一つあります。

 その副次的な観点として、戦後の基準をどこに求めるのかということもあります。東京裁判は、非常に悲劇的な裁判でしたが、日本はそれを受け入れたのです。そのことが気に入らないというのは分かる...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
デジタル全体主義を哲学的に考える(1)デジタル全体主義とは何か
20世紀型の全体主義とは違う現代の「デジタル全体主義」
中島隆博
日本のエネルギー&デジタル戦略の未来像(1)電動化で起こる「カンブリア爆発」
ロボットの「カンブリア爆発」時代へ電動化がもたらすもの
岡本浩
トランプ・ドクトリンと米国第一主義外交(1)リヤド演説とトランプ・ドクトリン
トランプ・ドクトリンの衝撃――民主主義からの大転換へ
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
編集部ラジオ2025(27)なぜ何回説明しても伝わらない?
なぜ伝わらない?理解の壁の正体を今井むつみ先生に学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
歴史の探り方、活かし方(1)歴史小説と史料探索の基本
日本は素晴らしい歴史史料の宝庫…よい史料の見つけ方とは
中村彰彦
デカルトの感情論に学ぶ(1)愛に現れる身体のメカニズム
デカルトが注目した心と体の条件づけのメカニズム
津崎良典
エネルギーと医学から考える空海が拓く未来(2)量子論と空海密教の本質
脳内の量子的効果――ペンローズ=ハメロフ仮説とは
鎌田東二
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
内側から見たアメリカと日本(2)アメリカの大転換とトランプの誤解
偉大だったアメリカを全否定…世界が驚いたトランプの言動
島田晴雄
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓