「保守主義」の分類とその尺度について
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
「保守」と一言で言うけれど、その中身はかなり多様
「保守主義」の分類とその尺度について
曽根泰教(慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツ・アカデミー副座長)
保守主義とは何かを考えるにはその多様な分類と尺度を考慮しなければならない。ここでは政治、経済のみならず、社会的、また思想的な観点からも「保守」を論じ、多様さゆえの保守主義の価値にも言及する。
時間:13分23秒
収録日:2013年9月13日
追加日:2014年2月24日
カテゴリー:

●「保守主義」のとらえ方その1-右派、革新の対極、王権を尊重するという考え方


 今日、ご質問がありましたのは、「保守主義」ということです。これは大変難しい質問の一つで、たとえば自民党のなかで「保守とは何か」「保守主義とは何か」と論争が始まりますと、なかなかまとまらないのです。

 大きく分けて、保守主義という考え方は二つあります。

 右派というものと保守主義は一緒ではないか。左派に対する右派。あるいは革新や社会主義に対する保守。こういう考え方がありますが、「保守」という、そもそも守るべき伝統や文化、歴史というのは何を指しているのか。

 これは日本やアメリカの場合、イギリスやヨーロッパの場合もあり大変難しいのですが、一つは、貴族なりあるいは王様がいる国は、「王様を守る」あるいは「王権を尊重する」というような歴史的な流れがあるわけです。


●「保守主義」のとらえ方その2-大きな政府に対する小さな政府の均衡財政


 そのような保守主義というものと、現在、外交や経済であるとか、あるいは政治や社会などがありますが、たとえば、社会というものは一般的には保守主義を分けるときに、我々は尺度をつくります。右と左の尺度と同時に、経済的に自由主義を指すときの保守主義や小さな政府の保守主義というものと、大きな政府の、政府が経済的に市場に介入するものがあります。このような小さな政府、大きな政府の対比で、経済的な自由主義、あるいは小さな政府の流れで言えば均衡財政を保守主義と呼ぶこともあります。当然、小さな政府であるからには、政治の役割や政府の役割を小さくして市場を尊重するという役割があります。

 しかし、難しいのは昔の保守主義、つまり自由主義や均衡財政の人と現在の新自由主義の人とは同じであるのか、その差がよく分からないということです。

 いずれにしても大きく言って、大きな政府と小さな政府が経済的にはあるわけです。

 問題は、政治的な保守というのは、先ほども申したように、たとえば片方に革命や変革などを強調する左派がいて、右派は伝統や文化、あるいは歴史を重んずるという保守、どちらかと言えば民族主義的な色彩が強い保守という理論や立場があるわけです。

 調べていくとこれは大変難しいのですが、「あなたは保守ですか、革新ですか」あるいは「経済的にあなたの立場は市場中心ですか、大きな政府です...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
グローバル環境の変化と日本の課題(1)世界の貿易・投資の構造変化
トランプ大統領を止められるのは?グローバル環境の現在地
石黒憲彦
多数派が多数でなくなるとき
悩める多数派…なぜ「多数は少数の集まり」と考えるべきか
曽根泰教
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(1)「プラチナ社会」構想と2050年問題
5つの産業で「資源自給・人財成長・住民出資」国家を実現
小宮山宏
マルクス入門と資本主義の未来(1)マルクスとはどんな人物なのか
マルクスを理解するための4つの重要ポイント
橋爪大三郎
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫

人気の講義ランキングTOP10
戦争と暗殺~米国内戦の予兆と構造転換(3)未解決のユダヤ問題
「白人vsユダヤ人」という未解決問題とトランプ政権の行方
東秀敏
編集部ラジオ2025(26)ソニー流!多角化経営と人材論
ソニー流「人材の活かし方」「多角化経営の秘密」を学ぶ
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(6)評価制度設計と「夢」の重要性
なぜ二本立ての評価制度が必要か…多種多様な人材の評価法
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(1)数が理解できない子どもたち
なぜ算数が苦手な子どもが多いのか?学力喪失の真相に迫る
今井むつみ
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
組織心理学~「不満」を生かす(1)不満・相談・予防
職場への不満は6割以上~ポイントは隠蔽、心理的安全性…
山浦一保
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(2)60歳は折り返し地点
「悠々自適」は定年を正当化するための神話にすぎない
出口治明