円安は日本の新たな産業育成のチャンス
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
林業が復活すると日本中に雇用が50万人生まれる!?
円安は日本の新たな産業育成のチャンス
小宮山宏(東京大学第28代総長/株式会社三菱総合研究所 理事長/テンミニッツ・アカデミー座長)
アベノミクスによって円安が進んでも、日本の輸出は増えていない。それは、多くの企業ですでに現地生産が進んでいるためだ。しかし、イノベーションを生活の質に結びつけるプラチナ産業が国内で本格的に稼動すれば、円安メリットを大いに活かすことができると、小宮山宏氏は言う。その違いはどこにあるのだろうか。
時間:8分50秒
収録日:2014年12月5日
追加日:2015年1月3日
≪全文≫

●円安を林業の復活に活かす奥の手とは


―― でも、先生。いろいろな問題がありつつも、やはり日本には実際にやれることが、いっぱいありますよね。

小宮山 それは、いっぱいあります。例えば、今はアベノミクスで円が安くなっていても、輸出は増えていないのです。それは結局、自動車会社に代表されるように、実際の製品をつくるのはマーケットに近い所で行うのが当然になっているからです。この流れは、円の価格とは関係なく動いてきたものです。

 では、円安では輸入物価が上がるだけのネガティブなことしか起こらないのかと考えると、私は日本でプラチナ産業をつくっていくことの助けになるかもしれないと思っているのです。

 例えば、典型的な例が林業です。林業が復活すると、私たちの計算では日本中に雇用が50万人生まれます。また、今のように森が全く放置されている状況を管理していくので、雨が降るとあちこちで土砂崩れが起きるような事態も防げます。

 ですから、これは本当にプラチナ産業なのですが、切った木はどうするのかという問題があります。本当なら輸入材を減らして、切った国産材を使っていけばいいのですが、一旦できているサプライチェーンをいきなり大きく変えることもできません。変化は、やはり徐々につくっていくのが、トランジション・マネジメント(移行管理)を行う上で大切です。

 では、切ってしまった木はどうするか。これは、木のない所へ輸出します。実は韓国と中国の二つの国には木がありませんので、そちらへ輸出するのです。その時に円安が効いてきます。円が120円の時代であれば、80円の時代の3分の2で相手国に売ることができるので、非常に高い競争力があるのです。


●「新技術+円安」の考え方で、新しいビジネスを開く


小宮山 そのように、円安を日本のプラチナ産業を育てるために活かす発想があるのではないかと思っているのです。

―― なるほど。円安になってから始める商売をやれば、それはオリジナルだから、既存の日本の産業とは違うわけですね。だから、新しい産業をつくるチャンスだということですね。先生が「日本は課題先進国だ」と言われる中には、「課題先進国だから、新しいビジネスがつくれる」という意味が含まれているのですよね。そこにさらに円安の要素を加味することで、新技術と一緒にできる商売をつくればいいというわけですね...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「科学と技術」でまず見るべき講義シリーズ
「宇宙の創生」の仕組みと宇宙物理学の歴史(1)宇宙の階層構造
「宇宙の階層構造」誕生の謎に迫るのが宇宙物理学のテーマ
岡朋治
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
本当によくわかる「量子コンピュータ入門」(1)量子コンピュータとは何か
「量子コンピュータ」はどういうもので、何に使えるのか
武田俊太郎
水から考える「持続可能」な未来(1)気候変動の現在地
最悪10メートル以上海面上昇…将来に禍根残す温暖化の影響
沖大幹
進化生物学から見た「宗教の起源」(1)宗教の起源とトランス状態
私たちにはなぜ宗教が必要だったのか…脳の働きから考える
長谷川眞理子
社会はAIでいかに読み解けるのか(1)経済学理論の役割
AIやディープラーニングによって社会分析の方法が変わる
柳川範之

人気の講義ランキングTOP10
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(6)秀吉との信頼関係と秀長の軍事能力
文武両道の名将…秀吉に怒られなかったのは秀長と家康だけ
黒田基樹
「次世代地熱発電」の可能性~地熱革命が拓く未来
地熱革命が世界を変える――次世代地熱の可能性に迫る
片瀬裕文
逆境に対峙する哲学(8)白隠の覚悟
宮本武蔵「型を捨てろ」と「守破離」が教えてくれること
津崎良典
戦略的資本主義と日本~アメリカの復活に学ぶ5つの提言
戦略的資本主義とは?日本再生へアメリカに学ぶ5つの提言
片瀬裕文
新しい循環文明への道(1)採掘文明から循環文明へ
2026年頭所感~循環文明の「三つの柱」…いよいよ実現へ
小宮山宏
「進化」への誤解…本当は何か?(1)進化の意味と生物学としての歴史
実は生物の「進化」とは「物事が良くなる」ことではない
長谷川眞理子
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
健診結果から考える健康管理・新5カ条(2)健診結果はダルマ落としでアプローチ
バラバラ事件!? 検査項目をバラバラに見てはいけない
野口緑
ヒトは共同保育~生物学から考える子育て(2)ヒトの子育てと脳の関係
チンパンジーは乱婚、ヒトは夫婦…人間の特殊性と複雑性
長谷川眞理子