●探究に必要な背景への想像力
皆さん、こんにちは。三谷宏治です。ずばり、子育ての話です。何冊かあるのですけれど、『戦略子育て 楽しく未来を生き抜く「3つの力」の伸ばし方』(東洋経済新報社)に沿って話をしていきましょう。「発想力」、「決める力」、そして「生きる力」、この3つの力をどう伸ばすのか。そういった本です。
では、こんな問題からいきましょう。消えた職業というものです。
何年か前にネットで出回っていたので、ご存じの方、ずばり知っている方もいらっしゃるかもしれません。1900年頃でしょうか、120年前、ヨーロッパにはこういう職業の方がけっこう多くいらっしゃったそうです。この方はある職業を遂行中です。その職業は何でしょうか、という問題です。
もちろん、“知っている・知らない”では面白くないので、本来であればこれは発見、そしてそれから探究する、そんな問題でもあるのです。
この1枚の写真からさまざまなことが分かりますよね。女性が立っている。そうでしょう。そして上を向いて、細い棒状のものを口につがえて、何だかにらんでいる。でも、場所はどこだといわれたら、まず道路ですよね。そして、歩道と車道がきれいに分かれています。後ろの女性は歩道に立っています。でも、この女性はわざわざ車道に出て、車のほうを向いているわけではなくて、おそらく家のほうを向いています。家のほうを向き、そして少し距離をとって、上のほうを向いて何をしているのでしょうか。
これで分かる人たちもいるでしょう。
もう1つはこの写真です。この男性もまったく同じ職業を遂行中です。この人はもっと直接的にやっています。長い棒を持って、そして窓を叩いています。これは、上に向かってノックする人、アッパーノッカーとか、ノッカーアッパーと言われていたらしいのです。要は、朝、起こす役の人たちです。「朝ですよ」と、契約した相手に対して起こしに行くというお仕事だそうです。
この仕事は1920年頃に一斉に消えてしまったそうです。何で消えたのでしょうか。それはもちろん、目覚まし時計が発明されたからではありません。そんなものは、おそらくもうその前からあったでしょう。でも、今でもそうですけれど、機械式のもので正確なものを手づくりしようと思ったら...