格差と成長~トマ・ピケティ『21世紀の資本』考
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
ピケティ『21世紀の資本』の読み方で気をつけること
格差と成長~トマ・ピケティ『21世紀の資本』考
伊藤元重(東京大学名誉教授)
本著が示したシンプルで強烈な方程式「r>g」をどう読むか?この格差論は日本にも当てはまるのか?社会現象ともなったトマ・ピケティ『21世紀の資本』を、東京大学大学院経済学研究科教授・伊藤元重氏が独自視点から語った。
時間:12分57秒
収録日:2015年2月2日
追加日:2015年2月4日
≪全文≫

●世界的ベストセラーの“格差論”。その意義と懸念


 フランスの経済学者・トマ・ピケティ氏が日本に来日し、大きなブームになっています。いろいろな新聞社やテレビ局がインタビューをしていて、私の知っている大手新聞社は15分しか時間がもらえなかったと嘆いていました。こういう形で「格差」の議論がいろいろな人達に関心を持ってもらうのは、非常にいいことだろうと思います。

 新聞報道等によると、『21世紀の資本』は、日本でも13万部、世界で100万部売れています。このことは、こういった課題についての関心の深さを表しているのだろうと思います。

 ただ、私がゼミの学生と英語版の最初の約200ページをかなり丁寧に読んだ印象から言いますと、なかなか普通の方が気軽に読めるような本ではないように思います。非常にいい本ですが、いろいろな事が書いてある本ですから、「この本は世界で100万部売れているが、インテリアにこそなれ、なかなか中身は広がらない」と、誰かが皮肉まじりに言っていました。購入される方は、ぜひ時間をかけてじっくり読んでいただきたいと思います。

 ピケティの議論は非常に面白い議論です。18世紀・19世紀の歴史までさかのぼって見ているところ、また、これだけ執拗に情報を捉えて網羅して出しているところが彼の強さです。ただ、読み方でいくつか懸念があるので、今日はそれを申し上げていきたいと思います。

 懸念とは何かというと、所得格差や所得分配の不平等資産格差は国によってかなり性格が違うもので、それをひとまとめにして格差論で議論するのは、非常に危険なことになりやすいだろうということです。

 ピケティが描いている世界、特に18世紀・19世紀の世界では、成長が今ほど高くない、非常に低成長の中で、ある意味で見ると、非常に格差が定着する世界なのです。たまたま自分の親が豊かな資産を持っていると、その遺産で子どもも食べていける。子どもが食べていけるだけでなく、その資産から収益も生まれるものですから、資産は膨らんでいく。一方で、親が資産を持っていない普通の家庭に生まれた人たちは、そこから頑張ってチャンスを広げようと思っても、低成長の社会なので、なかなかチャンスが出てこない。そういった、欧州型の強い格差定着をベースにしているわけです。

 彼は、21世紀になっていくと、さまざまな事情で経済成長...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
独立と在野を支える中間団体(1)「中間団体」とは何か
国家の中で個人が楽しく生きるために、なぜ「中間団体」が重要か
片山杜秀
本当によくわかる経済学史(1)経済学史の概観
経済学史の基礎知識…大きな流れをいかに理解すべきか
柿埜真吾
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
為替レートから考える日本の競争力・購買力(1)為替レートと物の値段で見る円の価値
ビッグマック指数から考える実質為替レートと購買力平価
養田功一郎
ポスト国連と憲法9条・安保(1)国連の構造的問題
核保有する国連常任理事国は、むしろ安心して戦争できる
橋爪大三郎

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(3)共産軍を殲滅――金門島での戦い
共産軍2万を金門島で殲滅…ただし一般人の命を守る軍人の本義を重視
門田隆将
サム・アルトマンの成功哲学とOpenAI秘話(1)ChatGPT生みの親の半生
OpenAI創業者サム・アルトマンとはいかなる人物なのか
桑原晃弥
資本主義の再定義…哲学で考える(2)今の時代の人間観と共生
「共生」の本当の意味とは?…人間はHuman Co-becoming
中島隆博
老子の神髄(9)ウェルビーイングと東洋思想
ウェルビーイングを東洋思想でどう考えるか?…大事な二つの教え
田口佳史
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ