●学者が相手にしている知識は「真か偽か」が問題
「知識の3類型」というと、大上段に振りかぶった大哲学論争のような感じがするかもしれませんが、今回は「知識とは何か」をざっとお話ししたいと思います。このシリーズでも齋藤ウィリアムさんが、「経験を知恵のレベルまで上げていくことが重要だ」とお話になっていました。それとも少し関係がありますが、それ以前に、知識には3種類あることをお話しします。
大学の研究者や学術論文を書いている人などは、知識を「信頼できる知識」と呼ぶだろうと思います。そのような場では、「真か偽か」、正しいか正しくないかが問われるためです。「STAP細胞はあります」と言っても、存在が証明されなければ、STAP細胞は存在しないのと同然なのです。
ただし、STAP細胞の経緯で皆さん気が付いたと思いますが、ネイチャーに書いた論文が問題になりました。真か偽かが知識の重要な基準ですが、その発表形態は依然として論文なのです。それはともかく、1番目は、学者が相手にしている知識で、真か偽かを問題とし、実験によって証明できるものです。
●「役に立つか立たないか」が問われる知識も多い
2番目は、「役に立つか立たないか」が問われる知識で、たくさんあります。ビジネススクールやロースクールで教わるのは、真か偽かは明確に証明できないかもしれないけれど、経営には十分役に立つ知識、情報です。真か偽かと、役に立つかどうかの違いは、例えば、経済学部の先生が唱えるミクロ経済学のモデルと、ビジネススクールの先生が行う経営のケースメソッドの違いにも関係します。
最近よく、国民の税金を使っている以上、社会の役に立つことをしていると証明できない科学者には、研究費を渡さなくてよいのではないか、という議論があります。この「役に立つ」にはさまざまなパターンがありますが、プロフェッショナル・スクールは、役に立つ知識をまとめて教えている所と言えます。
●面白いか面白くないかで判断される知識もある。
3番目は、普通、知識とは呼ばないのですが、「面白いか面白くないか」で判断されるものがたくさんあります。例えば、テレビ、ゲーム、アニメ、小説などです。ベストセラー小説は、おそらく面白いから読む人が多いのでしょう。
一般的には、数学的な証明などに興味を持つ人はそれほどいませんが、真か...