●模写の域を超えていたセザンヌの作品
カミーユ・ピサロは印象派の最長老の画家です。彼は多くの画家に教えを授け、影響を与えました。印象派にとってもっとも重要な人物の1人と考えることができると思います。ピサロが教えた、ピサロの教えの影響を受けた画家の中でも最大の1人はこのセザンヌだと思います。
この作品、ピサロが当時住んでいた自分の住まいの近くのルーヴシエンヌというところを描いています。
ピサロはこの作品をセザンヌに貸し与えているのです。セザンヌはこの絵を模写しています。まずピサロの作品から見ていきますと、秋、冬が近いでしょうか。木の葉が強い風で舞い落ちている状態です。太陽はかなり角度が浅くなっていますので、夕暮れに近い時間帯です。母親と子ども、おそらく娘さんだと思いますが、手をつないで光の方向、夕焼けの方向に歩いていきます。それを取り囲むように前景には落ち葉が描写され、石のベンチあるいは生け垣が奥へとつながっていきます。
中景では、このルーヴシエンヌの傾斜地にありました畑、そして家々が見えますし、さらに遠景には、これは古い時代の遺跡だと思いますけれど、ちょうどアーチが描き込まれているのもお分かりいただけますでしょうか。
この作品を借り受けて、セザンヌは模写をします。
実はこの作品の時点でセザンヌは自分の師であるピサロとはかなり違った表現にすでに達してしまっているのです。ひょっとしたらセザンヌはピサロの作品を模写しようと思えば、そのままきれいに模写することができたのかもしれません。ただ、ピサロの作品に比べて、この作品ではすでにセザンヌの個性が色濃く出ているように思います。というのは、より色彩が鮮やかに、ビビッドになってますし、明暗比、色です、明るい部分、暗い部分の対比が強くなっています。画面全体、構図がピサロの作品は奥に抜けていくような広さを感じさせるものでした。
セザンヌの作品は、これはもう模写ではなくセザンヌの作品だと思うのですけれど、一回り小さいのです。そのせいもあってか、画面の全体の構成がより引き締まっています。こういったセザンヌの特徴が早くもこの模写から表れているというところがたいへん面白いところだと...