印象派とは~画家たちの関係性から技法まで
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
6,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
マネ《エミール・ゾラの肖像》に残る浮世絵の影響
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(6)浮世絵が印象派に与えた影響
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
印象派の画家たちに影響を与えたといわれるのが日本の浮世絵である。ではその影響は具体的にどのような形で作品に反映されているのだろうか。マネの《エミール・ゾラの肖像》という作品を取り上げて、その中で描かれたアイテムや色使いから見てとれる、浮世絵の影響について解説する。(全8話中第6話)
時間:10分58秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2025年2月1日
カテゴリー:
≪全文≫

●印象派の作品に残る浮世絵が与えた影響


 いつから日本の浮世絵が画家たちの目に留まるようになったのかについては異論があるので、先ほど(第5話)の1870年代という時間軸をもう少し戻さなければいけません。1860年代の後半にはマネは明らかに浮世絵を見ることができたのです。

 そのうちの表現の1つというのは、作品の中にも証言されています。これは《エミール・ゾラの肖像》なのですけれど、ゾラはレアリスムの作家としてよく知られています。ゾラ自身はマネとともにカフェで議論を戦わせたうちの1人で、カフェ・ゲルボワの常連の1人だったのです。こちら、背景に描かれているのは日本風の衝立です。日本か中国の花鳥画がバックに描かれています。

 さらにもう1つ背景を見ますと、《オランピア》の複製版画が描かれています。これはゾラがマネの《オランピア》がサロンに出品されて評判になったときに、マネ擁護の論陣を張ったことで知られているからなのです。この《オランピア》の版画の中のオランピア、ヴィクトリーヌ・ムーランはゾラのほうに視線を向けています。少し実際の版画とは変更されているのです。これはゾラへの感謝の気持ちを込めているともいわれています。

 壁の部分にベラスケスの《バッカス》の複製の版画が描かれています。これは先ほど(第5話で)見ていただいたように、マネは明らかにスペイン絵画の影響を受けています。

 例えば、この《笛を吹く少年》などは平坦のグレー、ニュアンスに富んだグレーなのですけれど、この処理をパッと見ますと、空間の位置関係が少し曖昧になっています。

 これは、ベラスケスが描いたハプスブルク家の王室の面々、この肖像画によく見られる表現です。壁にあるベラスケスの複製版画は、マネに与えたスペイン絵画の影響を彷彿とさせます。

 もう1つ、この画中には浮世絵が飾られているのです。同じようにゾラのほうを見ています。これもおそらく、当時すでにマネが浮世絵を知っていたということで、その影響だといわれています。

 ところが、1860年代、マネは実際には自分の作品に浮世絵の影響を色濃くは残していないのです。浮世絵はおそらく知っていたでしょうが、作品(の表現)に取り入れるようになるの...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
與那覇潤
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介
山上憶良「好去好来の歌」を読む(1)山上憶良に学ぶ国際感覚
8世紀を代表する知識人・山上憶良が感じたグローバリズム
上野誠
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
音楽の父バッハ…なぜ「音楽」が西洋でリベラルアーツなのか?
樋口隆一
山上憶良「沈痾自哀文」と東洋的死生観(1)因果応報と日本仏教の課題
山上憶良が「沈痾自哀文」で問いかけた因果応報の問題
上野誠
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆

人気の講義ランキングTOP10
ロシア人の見る「ロシアの歴史」(3)ヴァイキング招致説とキエフ・ルーシ
ロシアの起源はヴァイキング?…キエフ・ルーシの興亡と、ロシアとウクライナの決定的な「歴史的溝」
上月豊久
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
『「甘え」の構造』と現代日本(1)「甘え」のインパクト
「甘え」は現代においてダメなものなのか…名著『「甘え」の構造』への2種類の誤解とは?
與那覇潤
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(14)ポリスと魂の堕落過程〈下〉僭主の末路
僭主制は欲望の奴隷…過度の自由が過度の隷属に転換する
納富信留
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
『万葉集』と律令社会~官僚の心得と歌宴(3)国司と郡司のつきあい
郡司の妻たちと宴会!?……国司・大原真人今城へのはなむけの歌に記された「媚態表現」の真相と人心掌握術
上野誠
高齢者のフレイル・認知症とその予防対策(5)サルコペニア・フレイル対策
認知症予防にはどんな食事がいいのか?鍵はビタミンDの充足
小川純人
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
「発想力」の技法を学ぶ(1)発見と探究(前編)
“なぜ”を繰り返せ!『発想力の全技法』に学ぶ原因探究法
三谷宏治