印象派とは~画家たちの関係性から技法まで
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
印象派の画家たちによる最先端の表現方法「筆触分割」とは
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(7)マネのトリックと印象派の表現方法
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
印象派の画家たちに大きな影響を与えたマネは、最後の印象派展を見届けることなくこの世を去った。マネの最後のサロン出品作となった《フォリー・ベルジェールのバー》には、よく観察するとさまざまなトリックが隠されており、そこには時代背景やマネの社会的ステータスが反映されていることが分かる。アカデミスムを重んじるサロンと世俗を表現した印象派の違い、そして当時の最先端の表現方法などとあわせて解説する。(全8話中第7話)
時間:8分21秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2025年2月8日
カテゴリー:
≪全文≫

●マネの最後のサロン出品作《フォリー・ベルジェールのバー》の不思議


 印象派の画家たちがひとしなみに仰ぎ見ていたエドゥアール・マネは、早くに亡くなってしまいます。マネが亡くなったときに、8回目の最後の印象派展は、まだ開催されていませんでした。印象派展に参加することなく、そして第8回目の印象派展を見届けることなく亡くなってしまったマネなのですけれど、印象派、そして第8回目の印象派展に出品していたポスト印象派、(つまり)印象派のあとの世代に大きな影響を与えることになります。

 最後のサロン出品作がこの《フォリー・ベルジェールのバー》という作品です。ロンドンのコートールド研究所にあります。この作品は本当に不思議な空間です。特にこの鏡、そしてその前に立っている金髪のモデルさんの位置関係です。

 このモデルさんはウエイターの役割を与えられているのですけれど、美術家の森村泰昌さんがこのモデルとなった女性に扮してバーのカウンターに立ってみたところ、手がどうしてもこの高さのカウンターに届かないのです。へそのレベル、あるいはウエストレベルよりもかなり下のところにカウンターはあります。なので、マネは明らかにこの手を長く伸ばすことでその操作をして、これを自然に見せているに違いないとおっしゃっています。

 画中の人間の位置関係、人のプロポーションといったものの操作は、それだけにとどまりません。挙げていけばキリがないのですけれど、このマジックのようなトリッキーな作品は、本来でしたら、この金髪のウエイトレスさんの前に立っているのはシルクハットをかぶった紳士のはずです。これは画面の右側に反射像として描かれているのですけれど、もう少し画面の左側にいないとこのような位置関係には入ってこないはずなのです。ところが、このウエイトレスさんが正対している位置にあたかもいるかのように描かれています。つまり、われわれはこのシルクハットの男性になって、この絵の前に立つことが余儀なくされるのです。

 現在においては、フェミニズムの時代を通り越して、これだけジェンダーについて意識しなければいけない時代ですので、白人の男性、しかもブルジョワジー階級の人物が鑑賞することを前提になっている作品はそれだけで非難の的になりそうですけれど、当時の時代背景、風俗、そしてフ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
AI時代に甦る文芸評論~江藤淳と加藤典洋(1)AIに代わられない仕事とは何か
江藤淳と加藤典洋――AI時代を生きる鍵は文芸評論家の仕事
與那覇潤
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀
『源氏物語』ともののあはれ(1)雅な『源氏物語』の再発見
『源氏物語』の謎…なぜ藤壺とのスキャンダルが話のコアに?
板東洋介

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
資本主義の再定義…哲学で考える(3)害なき利とコミュニティの時代
強欲資本主義は死んだ…他者を助けることのできる他者を助ける
中島隆博
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(3)共産軍を殲滅――金門島での戦い
共産軍2万を金門島で殲滅…ただし一般人の命を守る軍人の本義を重視
門田隆将
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(2)翻訳に込めた日米の架け橋への夢
アメリカ人の心を震わせた20歳の日系二世・三上弘文の翻訳
門田隆将
お金とは何か?…金本位制とビットコイン(1)お金の機能とその要件
お金の「3大機能」とは何か? そしてお金のルーツとは?
養田功一郎
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎