印象派とは~画家たちの関係性から技法まで
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鍵は「真似る」…印象派の歴史をたどる上での重要な観点
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(2)絵画は絵画からしか生まれない
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
どんなに優れた芸術家にも手本となる先達や刺激を与え合う仲間がいるものだが、印象派の画家たちはどのような人物に影響を受けてその作風を磨いていったのだろうか。その画法でピサロやセザンヌに影響を与えたクールベ、ミレーと交流したルソーなどを取り上げ、印象派を発展させた人々との繋がりを解説する。(全8話中第2話)
時間:15分05秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2025年1月4日
カテゴリー:
≪全文≫

●印象派の画家に影響を与えたクールベの技法


 ドラクロワ以外にも多くの影響を印象派に与えた画家がいます。ギュスターヴ・クールベです。

 クールベは、当時イギリスそしてフランス(など欧米)で順番に開催されていた万国博覧会(のうち)パリで開かれた1855年の万博に、合計11点の作品を提出します。ところが、審査委員会が主要な作品、特にこの《画家のアトリエ》という、クールベの大作の出品を拒否してしまったのです。このために、万博の会場の近くにいたパトロンのブリュイアスという人に出資してもらい、「掘っ立て小屋」といわれるような仮小屋を建ててもらいました。現在の美術史家たちは「パビリオン」と呼んでいますけれど、このパビリオンで個展を開催しております。これがのちに印象派の画家たちが自前の展覧会を開くときの参考にもなりました。

 また、作品の描き方、技法でもクールベは印象派の画家たちに多くの影響を与えているのです。中でもクールベがいちばん得意としたのは、絵の具を厚く盛り上げて塗っておいて、それをパレットナイフを使ってスッとこすり、平らにするという技法なのです。こうしますと、例えば雪景色であったり、あるいは波がザバーンと落ちて白く泡立つところ、あるいは岩の表現であったり、いろいろなものにこの技法を転用できたのです。多くの画家たちがこの方法を学んでおります。

 特に1860年代の、このときは別々に学んでいたピサロ、セザンヌの2人の画家たちは同時期にクールベの影響を受けまして、よく絵の具の厚塗りをしてパレットナイフを使って仕上げるという方法をしております。

 ご覧いただいておりますのは、セザンヌの《林間の空地》という作品です。福島県の裏磐梯にある諸橋近代美術館という美術館の所蔵品です。これは本当に美しい作品なのですけれど、日本にあります、この模索期のセザンヌのクールベの影響を実によく示した作品と思われております。

 もっとも、クールベは暗い、濃い色の絵の具を多用しておりました。ですから、画面は黒くなります。よく「ビチューム」という、焦げ茶色を多用しておりましたので、サロンではビチューム色と揶揄されたものなのです。セザンヌも当初はこのビチュームを使った黒い、暗い画面を多用しておりましたけれど、ちょ...

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