●《ラ・グルヌイエール》から分かるモネとルノワールの作風の違い
1869年のことでした。モネとルノワールは2人仲良く並んでセーヌ川に位置する、このラ・グルヌイエールというパリ近郊の保養地へ行き、屋外に並んでカンバスを出して、2人ともパレットを持って、そしてチューブから出した絵の具そのままで作品を描き始めます。
もっとも、この時点で2人ともサロンに出品する作品は別に描くことを考えていたようです。つまり、アトリエで丁寧に描いて、仕上げを施してから筆跡とかをできるだけ残さないようにしながら、完成作として大きな画面に描いて提出しようと考えていたようです。けれど、現場で描かれたこの作品には明らかに筆跡が多く残っていますし、絵の具も混ぜられていません。
これは、現在メトロポリタン美術館が所蔵している《ラ・グルヌイエール》です。ラ・グルヌイエールという保養地にあります。カマンベールとか、植木鉢とか呼ばれます、水の中に浮かんである中の島です。これがちょうど植木鉢の形をしていたので、あるいはチーズのカマンベールのような遠景をしていたので、そう呼ばれます。ここに橋がかかっており、浮き船もしつらえられています。水浴びをする人たちが水着に着替えて、ここから水の中に入ることができるというようなしつらえになっていましたし、中の島といったらいいのか、浮島ともいえない小さな島のところには水浴している家族や、連れ合いを待つ人々が描かれています。
モネの関心は明らかに水面の反射、反映です。あと、たゆたう船です。もっとも、船が動くことによって水面の波の形は変わっていきます。背景の風景は、どちらかというと明るい色面でザッと絵筆で塗っていった感じがします。
ルノワールが同じときに同じ場所で描いたものを見ますと、少し雰囲気が違います。水面の部分は、隣にいたモネに倣ってでしょうか、比較的大ざっぱな筆使いで描いていますけれど、カマンベールの中の島の上にはファッショナブルに着飾った人物たちがいますし、モネがまったく描いていなかった犬もお腹を見せて横たわって描かれています。
モネとルノワールの関心の違いは、まずこういった描かれているモティーフそのものにも見えていますし、何よりも背景のところを見ていただくと、2...