印象派とは~画家たちの関係性から技法まで
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
マネの《草上の昼食》が問題に…スキャンダルの真相とは
印象派とは~画家たちの関係性から技法まで(4)マネとモネの《草上の昼食》
芸術と文化
安井裕雄(三菱一号館美術館 上席学芸員)
印象派を代表するマネとモネがそれぞれ描いた《草上の昼食》という作品。マネの《草上の昼食》について、その内容が発表当時からスキャンダルをおこしていたとする言説が長年あったが、実際にはそこまでではなかったようだ。そんなマネの本作に影響を受けたモネの《草上の昼食》は、作品の大きさに着目すると、マネとは異なる影響を与えた作品の存在が浮かび上がってくる。(全8話中第4話)
時間:8分06秒
収録日:2023年12月28日
追加日:2025年1月18日
カテゴリー:
≪全文≫

●評価を得られにくくてもサロンへの出品を続けたマネ


 さて、印象派の画家たちの多くは、ドガを除いて風景画、風俗画を得意としておりましたし、歴史画を目標として描く画家たちに比べますと、どうしてもサロンでは割りが悪かったのです。

 もっとも、印象派の画家たちは一般に信じられているのとは逆に、サロンの審査には何回も出品して、実際サロンの出品にもこぎつけています。ですけれど、サロンへの出品回数がそれほど多くはないということや、何よりもサロンでは歓迎されない主題を多く描いているということで、彼らは自前のマーケットを開拓するために、自分たちの展覧会を開いたと、後知恵でよくいわれるようになります。それが印象派展なのです。

 印象派展に出品を求められながら、マネは生涯にわたって(印象派展には出品せずに、)サロンへ出品をし続けました。落選者展に最終的に出品したのですが、この《草上の昼食》をはじめとして、マネは描いた作品は、基本的にはサロン(の審査)に送り込んで、サロンで評価されることを望んでいたのです。


●マネの《草上の昼食》で問題となったスキャンダル性の実際


 当時、実はこの作品はスキャンダルになったといわれております。裸の女性の横には服を着た男性が2人います。奥では水浴びをする女性がいます。この男性2人は服を着ている状態なのですけれど、当時の画学生の服そのままであったということがスキャンダルになったといわれております。

 もっとも、裸婦と着衣の男性の組み合わせは、伝統的にルネッサンス時代から主題として描かれておりましたので、これは主題的な問題というよりも、同時代の男性、あるいは同時代の女性がこうやって裸婦を囲んで描かれていることのほうが問題になったと、現在ではいわれております。

(よって)この作品はスキャンダルになったと長い間いわれておりましたが、実際のところ、ある研究者が当時のサロン評などを綿密に読み直したところ、この作品をスキャンダルである、あるいはスキャンダラスな作品であると書いた評論は残されていなかったのです。マネが亡くなったあとの新聞記事などを書いた評論家たちが、この作品が発表されたときに落選者展でスキャンダルを巻き起こしたというような書き方をしたものですから、歴...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
ショパンの音楽とポーランド(1)ショパンの生涯
ショパン…ピアノのことを知り尽くした作曲家の波乱の人生
江崎昌子
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
岡倉天心『茶の本』と日本文化(1)岡倉天心の生涯
岡倉天心の『茶の本』…世界に向けた日本伝統文化の発信
大久保喬樹
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2025(25)クーデターで考える「政治の要点」
台湾クーデター・シミュレーション…「世直し」への条件
テンミニッツ・アカデミー編集部
産業イニシアティブでつくるプラチナ社会(2)再生可能エネルギーの可能性と経済性
やればできる!再生可能エネルギーのポテンシャル高い日本
小宮山宏
クーデターの条件~台湾を事例に考える(1)クーデターとは何か
台湾でクーデターは起きるのか?想定シナリオとその可能性
上杉勇司
エンタテインメントビジネスと人的資本経営(1)ソニー流の多角化経営の真髄
ソニー流「多角化経営」と「人的資本経営」の成功法とは?
水野道訓
学力喪失の危機~言語習得と理解の本質(2)言葉を理解するプロセスとスキーマ
なぜ子どもは教えられても理解できないのか?鍵はスキーマ
今井むつみ
徳と仏教の人生論(1)経営者の条件と50年間悩み続けた命題
宇宙の理法――松下幸之助からの命題が50年後に解けた理由
田口佳史
伊能忠敬に学ぶ「第二の人生」の生き方(2)50歳からの目標
伊能忠敬の生き方に学ぶ「50歳からの目標」とは?
童門冬二
『還暦からの底力』に学ぶ人生100年時代の生き方(1)定年制は要らない
仕事をするのに「年齢」は関係ない…不幸を招く定年型思考
出口治明
経験学習を促すリーダーシップ(1)経験学習の基本
成長を促す「3つの経験」とは?経験学習の基本を学ぶ
松尾睦
数学と音楽の不思議な関係(4)STEAM教育でつくる喜びを全ての人に
世界で最もクリエイティブな国は? STEAM教育が広がる理由
中島さち子