●評価を得られにくくてもサロンへの出品を続けたマネ
さて、印象派の画家たちの多くは、ドガを除いて風景画、風俗画を得意としておりましたし、歴史画を目標として描く画家たちに比べますと、どうしてもサロンでは割りが悪かったのです。
もっとも、印象派の画家たちは一般に信じられているのとは逆に、サロンの審査には何回も出品して、実際サロンの出品にもこぎつけています。ですけれど、サロンへの出品回数がそれほど多くはないということや、何よりもサロンでは歓迎されない主題を多く描いているということで、彼らは自前のマーケットを開拓するために、自分たちの展覧会を開いたと、後知恵でよくいわれるようになります。それが印象派展なのです。
印象派展に出品を求められながら、マネは生涯にわたって(印象派展には出品せずに、)サロンへ出品をし続けました。落選者展に最終的に出品したのですが、この《草上の昼食》をはじめとして、マネは描いた作品は、基本的にはサロン(の審査)に送り込んで、サロンで評価されることを望んでいたのです。
●マネの《草上の昼食》で問題となったスキャンダル性の実際
当時、実はこの作品はスキャンダルになったといわれております。裸の女性の横には服を着た男性が2人います。奥では水浴びをする女性がいます。この男性2人は服を着ている状態なのですけれど、当時の画学生の服そのままであったということがスキャンダルになったといわれております。
もっとも、裸婦と着衣の男性の組み合わせは、伝統的にルネッサンス時代から主題として描かれておりましたので、これは主題的な問題というよりも、同時代の男性、あるいは同時代の女性がこうやって裸婦を囲んで描かれていることのほうが問題になったと、現在ではいわれております。
(よって)この作品はスキャンダルになったと長い間いわれておりましたが、実際のところ、ある研究者が当時のサロン評などを綿密に読み直したところ、この作品をスキャンダルである、あるいはスキャンダラスな作品であると書いた評論は残されていなかったのです。マネが亡くなったあとの新聞記事などを書いた評論家たちが、この作品が発表されたときに落選者展でスキャンダルを巻き起こしたというような書き方をしたものですから、歴...