『ロビンソン・クルーソー』とは何か
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『ロビンソン・クルーソー』はなぜ300年間読まれてきたのか
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なぜ『ロビンソン・クルーソー』は“最初の近代小説”なのか
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(1)読み続けられる18世紀の小説
武田将明(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
『ロビンソン・クルーソー』といえば、無人島。知恵と工夫と冒険心あふれるヒーローとして、だれもが認識している。しかし、実際にその小説を読んだ人は意外に少ないのではないだろうか。この小説が出版された時代背景や著者の経歴などを通して、この本の書かれた意義、小説を読む意味などを探っていく。(全7話中第1話)
時間:8分26秒
収録日:2020年7月22日
追加日:2020年9月1日
≪全文≫

●『ロビンソン・クルーソー』は一般的イメージとは違う意外な面もある作品


 東京大学総合文化研究科の武田と申します。今日は「『ロビンソン・クルーソー』とは何か」ということでお話をしたいと思います。よろしくお願いします。

 『ロビンソン・クルーソー』についてお話しするわけですけれども、かなり有名な小説なので、皆さんご存じかと思います。

 基本的な情報について説明しておきますと、1719年にイギリスのダニエル・デフォーという作家が発表した小説です。

 無人島に漂着した主人公が、たった1人で家や畑をつくり、自給自足の生活をする物語であるとまとめることができるでしょう。また、文学の歴史に詳しい方であれば、この『ロビンソン・クルーソー』という小説は、しばしば近代的な「リアリズム小説の元祖」と呼ばれているということもご存じかもしれません。

 このようによく知られている作品ではありますが、実際に『ロビンソン・クルーソー』という小説を読まれた方は、それほど多くないかもしれません。また、読まれていても、ひょっとしたら読む前に予想していた内容と違っていて、少し困惑された方もいるかもしれません。

 よく学生さんなどと『ロビンソン・クルーソー』のイメージについて話すと、「無人島の話だと思っていたんだけども、実際読んでみると、なかなかロビンソンが無人島に漂着しないので困った」とか、「途中でやめてしまった」というような方もいます。そのように、一般的なイメージとは違う意外な面もある作品だということを、まず確認しておきたいと思います。

 そのような基本的な話を踏まえて、これからのお話の内容は、『ロビンソン・クルーソー』とともに、同じ作者ダニエル・デフォーのもう一つの作品『ペストの記憶』をほんの少しですが、ご紹介します。そのなかで、小説を読むとはどういうことなのかを考えてみたいと思っております。


●18世紀の小説は現代におけるゲーム機やスマホのような存在だった


 まず小説について考えるにあたり、『ロビンソン・クルーソー』が刊行される4年前(1715年)に刊行された『家庭信仰のすすめ(“Family Instructor”)』というタイトルの作品に出てくる、ある一場面を紹介したいと思います。

 この作品は18世紀の話で...

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