『ロビンソン・クルーソー』とは何か
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『ロビンソン・クルーソー』の面白さは人物に比重があるのか
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(3)面白いフィクションの条件
武田将明(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
一般的にフィクションを面白くするための条件として、「筋」と「人物造形」という二つの要素が重要だといわれる。読者を引きつけ、物語の続きを聞きたくさせるのは理にかなった筋であり、魅力的・個性的な人物なのだ。その条件に照らし合わせると、『ロビンソン・クルーソー』の位置付けは果たしてどうなのだろうか。(全7話中第3話)
時間:5分28秒
収録日:2020年7月22日
追加日:2020年9月15日
≪全文≫

●面白いフィクションをつくるための二つの条件


 ここで少し話の方向を変えて、一般的にフィクションないし小説としてイメージされているような作品が面白くなるには、どこに工夫をしたらいいだろうか、という話をしたいと思います。

 面白いフィクションをつくるための条件としては、恐らくまずは「筋(plot)」が重要だと考えられるかもしれません。つまり、読んでいって納得できるような、理にかなった筋を構築して、読者を巧みに作品の世界に引っ張り込む。それができてこそプロの作家であるというふうに思われるかもしれない。そして実は、文学作品において “plot”(筋)が大事だということは、古くさかのぼれば、アリストテレスが『詩学』という本のなかで主張していることでもあって、実に長い歴史のある文学に対する考え方になります。

 これとはまた別に、恐らく「人物の性格(character)」が大事だと考える人もいるでしょう。魅力的な、あるいは個性的な登場人物をうまく組み合わせて、読者を飽きさせないようにする。それも確かにフィクションを面白くするには重要かもしれません。そのためには、言うまでもなく、それぞれのキャラクターが「キャラ」としてしっかりと造形されていることが重要です。


●『ロビンソン・クルーソー』は二つの条件を満たしているのか


 では、『ロビンソン・クルーソー』という作品は、この二つの条件を満たしているでしょうか。

 まず1番目の「筋」の問題について考えると、これまで説明したように、ロビンソンの行動を本人が合理的に説明できていません。つまり、偶然の思いつきや衝動で物語が展開してしまっている。ここに何か納得できるような筋、理にかなった筋をつくるのは不可能であるということがいえます。なので、筋を面白くするというのは、なかなか難しい。

 実際読んでみると、『ロビンソン・クルーソー』の筋は実に単純です。無人島に漂着した後は、頑張って無人島を開発して、また苦難があって、また頑張って、それの繰り返しではあります。

 次に2番目。性格の問題というのはどうでしょうか。この面に関しては、ロビンソンという人物は、なるほど確かに個性があります。無人島で自給自足の生活をするという人物像は、『ロビンソン・クルーソー』がおそらく初めて印象深く描いた作品というわけです。...

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