『ロビンソン・クルーソー』とは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
『ロビンソン・クルーソー』の面白さは人物に比重があるのか
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(3)面白いフィクションの条件
武田将明(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
一般的にフィクションを面白くするための条件として、「筋」と「人物造形」という二つの要素が重要だといわれる。読者を引きつけ、物語の続きを聞きたくさせるのは理にかなった筋であり、魅力的・個性的な人物なのだ。その条件に照らし合わせると、『ロビンソン・クルーソー』の位置付けは果たしてどうなのだろうか。(全7話中第3話)
時間:5分28秒
収録日:2020年7月22日
追加日:2020年9月15日
≪全文≫

●面白いフィクションをつくるための二つの条件


 ここで少し話の方向を変えて、一般的にフィクションないし小説としてイメージされているような作品が面白くなるには、どこに工夫をしたらいいだろうか、という話をしたいと思います。

 面白いフィクションをつくるための条件としては、恐らくまずは「筋(plot)」が重要だと考えられるかもしれません。つまり、読んでいって納得できるような、理にかなった筋を構築して、読者を巧みに作品の世界に引っ張り込む。それができてこそプロの作家であるというふうに思われるかもしれない。そして実は、文学作品において “plot”(筋)が大事だということは、古くさかのぼれば、アリストテレスが『詩学』という本のなかで主張していることでもあって、実に長い歴史のある文学に対する考え方になります。

 これとはまた別に、恐らく「人物の性格(character)」が大事だと考える人もいるでしょう。魅力的な、あるいは個性的な登場人物をうまく組み合わせて、読者を飽きさせないようにする。それも確かにフィクションを面白くするには重要かもしれません。そのためには、言うまでもなく、それぞれのキャラクターが「キャラ」としてしっかりと造形されていることが重要です。


●『ロビンソン・クルーソー』は二つの条件を満たしているのか


 では、『ロビンソン・クルーソー』という作品は、この二つの条件を満たしているでしょうか。

 まず1番目の「筋」の問題について考えると、これまで説明したように、ロビンソンの行動を本人が合理的に説明できていません。つまり、偶然の思いつきや衝動で物語が展開してしまっている。ここに何か納得できるような筋、理にかなった筋をつくるのは不可能であるということがいえます。なので、筋を面白くするというのは、なかなか難しい。

 実際読んでみると、『ロビンソン・クルーソー』の筋は実に単純です。無人島に漂着した後は、頑張って無人島を開発して、また苦難があって、また頑張って、それの繰り返しではあります。

 次に2番目。性格の問題というのはどうでしょうか。この面に関しては、ロビンソンという人物は、なるほど確かに個性があります。無人島で自給自足の生活をするという人物像は、『ロビンソン・クルーソー』がおそらく初めて印象深く描いた作品というわけです。...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
文明語としての日本語の登場(1)古代日本語の復元
「和歌」と「宣命」でたどる奈良時代の日本語とその変遷
釘貫亨
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
都知事、非核三原則…1970年・30代の慎太郎が書いていたこと
片山杜秀
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
『太平記』に学ぶ激動期の生き方(1)なぜ今『太平記』を読むべきなのか
『太平記』は乱世における人間の処し方が学べる古典文学
兵藤裕己
「ホメロス叙事詩」を読むために(1)ホメロスを読む
2700年前のホメロスの叙事詩が感動を与え続ける理由
納富信留
バッハで学ぶクラシックの本質(1)リベラルアーツと音楽
中世ヨーロッパの基礎的な学問「7自由学科」の一つが音楽
樋口隆一

人気の講義ランキングTOP10
イラン戦争とトランプ大統領の戦争指導(1)米軍式戦略リーダーシップによる評価
イラン戦争…トランプ大統領の戦争指導のどこが問題なのか?
東秀敏
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
編集部ラジオ2026(10)ユダヤ人特集~鶴見太郎先生
【10min解説】鶴見太郎先生《教養としてのユダヤ人の歴史》
テンミニッツ・アカデミー編集部
高市政権の進むべき道…可能性と課題(1)高市首相の特長と政治リスク
歴史的圧勝で仕事人・高市首相にのしかかるリスク要因
島田晴雄
ユダヤ神話の基本を知る
ユダヤ教の神話…天地創造、モーセの十戒、死後の世界
鎌田東二
小澤開作と満洲事変・日中戦争(1)少年時代の苦労と五族協和の夢
満洲で「五族協和」に命を懸けた小澤征爾の父・小澤開作
小澤俊夫
日本人とメンタルヘルス…心のあり方(7)若者の引きこもりと日本の教育問題
日本の引きこもりの深い根源…「核家族」構造の問題とは?
與那覇潤
これから必要な人材と人材教育とは?(1)人手の供給不足とマクロ経済への影響
ごく一部の人手不足が「致命的」になる…Oリング・セオリー
柳川範之
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(7)日本の倫理こそ未来の理想
他人の幸福実現に喜びを見出す日本の道徳こそ未来の理想だ
賴住光子
イスラエルの歴史、民族の離散と迫害(1)前編
古代イスラエルの歴史…メサイア信仰とユダヤ人の離散
島田晴雄