『ロビンソン・クルーソー』とは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要無料視聴できます!
▶ 第1話を無料視聴する
閉じる
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
デフォーの人生に影響を与えたカルヴァン派の「予定説」
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(6)デフォーの人生
武田将明(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
『ロビンソン・クルーソー』の著者ダニエル・デフォーはどんな人生を歩んできたのか。重要なポイントは、デフォーの家族がイングランドで多数派の信奉する「国教会」という宗派ではなく、「長老派教会」という教会の信者だったことだ。そのことがデフォーの人生に大きな影響を与えている。そこにはカルヴァン派の「予定説」の影響もかなり大きいという。(全7話中第6話)
時間:7分33秒
収録日:2020年7月22日
追加日:2020年10月6日
≪全文≫

●挿絵で見る『ロビンソン・クルーソー』の名場面


 『ロビンソン・クルーソー』についてのお話はだいたいこれぐらいにいたしますが、少し、今スライドでご覧いただいている図版を説明しておきましょう。

 左側の図版が、ウォルター・パジェットという19世紀の挿絵画家による挿絵です。第5話でご紹介した、浜辺に一つだけ足跡を見つけたときのロビンソンの驚きを描いた、非常に巧みな版画です。ダニエル・デフォーの同時代ではありませんが、非常に有名な版画でもあります。

 また、この右側の肖像画は、ご覧いただければ分かるように、デフォー本人の肖像画になります。こういう人物だったわけですね。

 まだ少し時間があるようですので、デフォーの人生について、またデフォーの書いたもう一つの作品『ペストの記憶』について補足的にお話をして、今回のシリーズ講義を締めくくりたいと思います。


●デフォーの人生に影響を与えた教会宗派


 デフォーという人物は、実に魅力的で、実に不思議な人物です。彼の人生について語ると、それだけで1時間ぐらい話せてしまうのですが、今日は今までのお話と関係する部分だけお話ししたいと思います。

 まず、重要なポイントとして、デフォーの家族はイングランドで多数派の信奉する「国教会(Anglican Church)」という宗派ではなく、「長老派教会(Presbyterian Church)」という教会の信者だったことが挙げられます。これが、デフォーの人生に大きな影響を与えています。

 "Presbyterian"の人たちを含めた「国教徒でない人」たち、つまり非国教徒を"Dissenters"と英語で総称します。この非国教徒は、オックスフォードやケンブリッジのような、今でも有名なイギリスの大学には入学できませんでした。現代の感覚でいえば、単なる宗派上の差別です。なので、デフォーはこういった大学に入学できませんでした。

 いっさいの高等教育を受けなかったわけではありません。非国教徒用とはいえ、アカデミーを出ていますから、学問はしっかり修めていますが、こういった伝統的な大学で勉強するのとは全然違うカリキュラムで、デフォーは学問を修めています。なので、これまですでに少し触れたように、伝統にとらわれない文学を書くことができたというわけなのです。


●...


スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
和歌のレトリック~技法と鑑賞(1)枕詞:その1
ぬばたまの、あしひきの……不思議な「枕詞」の意味は?
渡部泰明
おみくじと和歌の歴史(1)おみくじは詩歌を読む
おみくじは「吉凶」だけでなく「和歌や漢詩」を読むのが本当
平野多恵
『源氏物語』を味わう(1)『源氏物語』を読むための基礎知識
源氏物語の基礎知識…人物関係図でみる物語の流れと読み方
林望
日本画を知る~その技法と見方(1)写実・写意・写生
日本画で大切な「写意」「写生」の深い意味とは?
川嶋渉
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
ピアノの歴史は江戸時代に始まった
野本由紀夫
クラシックで学ぶ世界史(1)時代を映す音楽とキリスト教
音楽はなぜ時代を映し出すのか?…音楽と人の歴史の関係
片山杜秀

人気の講義ランキングTOP10
インテリジェンス・ヒストリー入門(1)情報収集と行動
日本の外交には「インテリジェンス」が足りない
中西輝政
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(1)史実としての豊臣兄弟と秀長の役割
豊臣兄弟の謎…明らかになった秀吉政権での秀長の役割
黒田基樹
編集部ラジオ2025(31)絵で語る葛飾北斎と応為
葛飾北斎と応為の見事な「画狂人生」を絵と解説で辿る
テンミニッツ・アカデミー編集部
葛飾北斎と応為~その生涯と作品(4)葛飾応為の芸術と人生
親娘で進歩させた芸術…葛飾応為の絵の特徴と北斎との比較
堀口茉純
平和の追求~哲学者たちの構想(4)ルソーが考える平和と自由
ルソーの「コスモポリタニズム批判」…分権的連邦国家構想
川出良枝
生成AI「Round 2」への向き合い方(1)生成AI導入の現在地
生成AIの利活用に格差…世界の導入事情と日本の現状
渡辺宣彦
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(2)バイアスの正体と情報の抑制
『100万回死んだねこ』って…!?記憶の限界とバイアスの役割
今井むつみ
熟睡できる環境・習慣とは(4)起きているときを充実させるために
夜まとめて寝なくてもいい!?「分割睡眠」という方法とは
西野精治
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
死と宗教~教養としての「死の講義」(1)「自分が死ぬ」ということ
世界の宗教は死をどう考えるか…科学では死はわからない
橋爪大三郎