『ロビンソン・クルーソー』とは何か
この講義シリーズは第2話まで
登録不要で無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
世界文学の歴史に大きな影響を与えた「デフォーのついた嘘」
『ロビンソン・クルーソー』とは何か(5)ロビンソンのリアリズム
武田将明(東京大学大学院総合文化研究科 教授)
『ロビンソン・クルーソー』の著者ダニエル・デフォーが求めたのは整合性や一貫性でなく、人間や世界の矛盾だった。そこに新時代のリアルが生まれ、引き継がれていったわけだが、なかでも論争を呼んだのが「足跡」をめぐる回収されない謎だという。いったいどんな謎なのだろうか。また「嘘」の意義とは。(全7話中第5話)
時間:11分49秒
収録日:2020年7月22日
追加日:2020年9月29日
≪全文≫

●「面白さ」にも伝統にもこだわらなかったデフォー


 前回までの話を受け入れていただいたとして、では次に、デフォーはどうして『ロビンソン・クルーソー』で新しいリアリズムを発見できたのでしょうか。その理由として、今は次の二つを挙げておきたいと思います。

 まず一つ目に、デフォーが娯楽としての小説に批判的だったということが挙げられます。小説を面白おかしく書くことが、デフォーにとっては必ずしもいいことだと思われていなかった。だから、筋をいろいろ工夫したり、キャラクターを面白くしようとしたりすることを、それほど考えなくてよかったわけです。

 またもう一つ、これはデフォーの人生に関わることで、あとで少し説明いたしますが、デフォーという人は信仰上の理由で当時の大学に入学できませんでした。

 当時の大学は、古典文学や古代哲学をかなり深く教えていました。そこで勉強するホメーロスの叙事詩やアリストテレースの哲学のような古典文学や哲学の素養が、ほかの大学出の文学者に比べると、デフォーには少なかったわけです。これが、実はかえって幸いしたとも考えられます。

 このような特徴があったがゆえに、面白く書こうと工夫する必要もなければ、また伝統的な文学のスタイルへのこだわりも、デフォーは持っていなかったのではないかと私は考えます。このような背景で、ダニエル・デフォーは新しいリアリズムというものを発見できたのではないでしょうか。


●「浜辺の足跡」に新しいリアリズムを味わう


 『ロビンソン・クルーソー』について見ていくなかで、新しいリアリズムを味わえる場面は作品中にいろいろと書かれています。そのような特徴ある場面をもう少し見ていきたいと思います。

 次に読むのは、ロビンソン・クルーソーが無人島に漂着してから15年後に起きたある事件を描いたものです。少し背景を説明しておきますと、島に漂着してからもう15年経っていて、ロビンソン・クルーソーは島のなかでかなりいろいろな自給自足のための工夫をしています。家を建て、畑を耕し、島にいる動物を家畜として飼育するといったことをして、非常に満ち足りた自給自足の生活をしていたのです。

 ロビンソン・クルーソーとしては、「もう、このまま島で生活をして、生涯が終...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「芸術と文化」でまず見るべき講義シリーズ
「万葉集」の聖徳太子――語りかける人(1)日本人の憧れ
聖徳太子と日本人…「実在しなかった」説の真相とは?
上野誠
『古今和歌集』仮名序を読む(1)日本文化の原点となった「仮名序」
『古今和歌集』仮名序とは…日本文化の原点にして精華
渡部泰明
ルネサンス美術の見方(1)ルネサンス美術とは何か
ルネサンスはどうやって始まった?…美術の時代背景
池上英洋
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿(1)政治家・石原慎太郎の源流と核の問題
石原慎太郎と三島由紀夫と近衛文麿…対比で見えてくる現代的課題
片山杜秀
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫

人気の講義ランキングTOP10
編集部ラジオ2026(33)鎌田東二先生の法華経講義解説-2
【10min名作探訪】大丈夫だよと励ましてくれる『法華経』…鎌田東二先生の講義
テンミニッツ・アカデミー編集部
『オデュッセイア』で読み解く神話の秘密(9)ライトノベルへの影響と物語の重要性
現代のライトノベルやゲームにもオデュッセイアの影響…神話は「創作活動」の重要な根源
松村一男
「満洲」から考える日本とアジア(4)蒙古襲来と清朝建国
実は元寇はモンゴル人ではなかった?満洲をめぐる民族興亡史と「漢族」との関係…蒙古襲来から清朝建国まで
宮脇淳子
ピアノでたどる西洋音楽史(1)ヴィヴァルディとバッハ
クラシック音楽の歴史をピアノ演奏で辿る~ヴィヴァルディ四季
野本由紀夫
おもしろき『法華経』の世界(1)法華経はSFだ!
法華経はSFだ!…心を元気にしてくれる法華経入門
鎌田東二
プラトン『ポリテイア(国家)』を読む(1)史上最大の問題作
全米TOP10大学の必読書1位が『ポリテイア(国家)』
納富信留
テロメアから考える「アンチエイジング」(1)老化とテロメアの関係
テロメアの長さが「がんリスク」と「老化」のカギを握る
堀江重郎
数学と音楽の不思議な関係(1)だれもがみんな数学者で音楽家
世界は音楽と数学であふれている…歴史が物語る密接な関係
中島さち子
人生100年時代の「ライフシフト概論」(1)人生100年時代のインパクト
80歳まで現役でいるために大切なこと…人生100年時代の発想法
徳岡晃一郎
生成AI「Round 2」への向き合い方(7)世界と日本の生成AI適用事例
電子カルテ、山火事分析、品質管理…世界の生成AI活用事例
渡辺宣彦