ルネサンス美術の見方
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油絵を完成させたヤン・ファン・エイクの驚くべき技法
ルネサンス美術の見方(3)ヤン・ファン・エイクの油彩技法
池上英洋(東京造形大学教授)
北方を拠点としたヤン・ファン・エイクは、油彩技法を完成させたルネサンス期の人物として名高い。外交官としての顔をも持ちつつ、作品の細部にさまざまな卓越した技巧をこらし、美術史上で最重要とも評される作品『ヘントの祭壇画』を生み出した。(全8話中第3話)
時間:11分23秒
収録日:2019年9月6日
追加日:2019年11月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●油絵を完成させた巨人、ヤン・ファン・エイク


 今回は、ヤン・ファン・エイクという画家を取り上げます。この名前もあまり日本では知られていませんが、美術史上では巨人として知られています。その理由は、ルネサンス美術において最初に登場する技術がたくさんある中、彼こそが油彩技法、つまり油絵を完成させた人物だからです。彼の作品にはそうした重要性があります。

 では、早速見ていきましょう。舞台はいわゆる「北方」と一言でくくられてしまうのですが、当時はネーデルランドと呼ばれていた場所です。低地帯地方で、現在ではオランダとベルギーを合わせた地域です。ここはイタリアに次いで、非常に経済力を持っていた都市が並んでおり、ブリュージュを中心とした商業都市が並んでいるところに特徴があります。


●細部に現れる、驚くべき技巧


 早速、ヤン・ファン・エイクの驚嘆すべき技巧をご紹介します。これが彼の『ファン・デル・パーレの聖母』という作品です。当時の中心地であるブリュージュにあります。これを見ていただくと、中央に聖母子がおり、そして左右に聖人がいます。

 細かな説明は抜きにして、まずは技巧を見ていただきたいのですが、一番右端に甲冑を着けた聖人がいますが、この聖人の部分を少し見ていくと、変わった兜(かぶと)を着けているのが分かります。曲面が並んでいるような兜です。位置関係を確認すると、右側に聖人が立っていて、中央に聖母マリアがいるという状況です。

 拡大してよく見てみてください。これが兜の表面です。お分かりでしょうか。この曲面の一つ一つに、中央の聖母マリアが映っているのです。これが全てそうです。そして、その背後にある窓からの射す光も、1体ずつ描かれています。わざわざ1体ずつ、描かれているのです。これを「鏡面反射」と呼ぶのですが、鏡面反射を描くのは非常に大変な作業です。にもかかわらず、わざわざこうした変わった形の兜になっているのは、彼がそれだけ技巧を見せたかったからです。難しければ難しいほど、画家として高い技能をアピールすることができます。そのためにわざわ...

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