ルネサンス美術の見方
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「最初の近代人」レオナルド・ダ・ヴィンチの『受胎告知』
ルネサンス美術の見方(4)レオナルド・ダ・ヴィンチ~前編~
池上英洋(東京造形大学教授)
2019年は、レオナルド・ダ・ヴィンチの没後500年に当たるが、彼の功績はいまだに解読し尽くされていない。しかし、彼の重要性は、彼が「最初の近代人」であるという点にある。美を追求するだけでなく、観察に従った描写を目指す、科学者としての姿が、そこにある。(全8話中第4話)
時間:12分46秒
収録日:2019年9月6日
追加日:2019年11月13日
カテゴリー:
≪全文≫

●レオナルド・ダ・ヴィンチは「最初の近代人」である


 それでは、いわゆるルネサンス美術における3巨匠を取り上げていきましょう。

 まず1人目が、レオナルド・ダ・ヴィンチです。ちょうど2019年が、彼の没後500年に相当します。500年前に亡くなったこの一人の人物を、私も含めた世界中の多くの人が勉強して、彼が残したノートを分析しています。彼については、その研究が始まって以来100年ほどたつのですが、それでもまだ解読し終わっていません。これは本当に驚くべきことなのですが、彼のことは知の巨人として、皆さんもよくご存じだと思います。

 まず彼の生涯の前半を取り上げますが、彼の重要性は、彼が「最初の近代人」であるという、この1点にあります。彼はよく、「万能の天才」と呼ばれますが、天才という言葉は、実は彼にはふさわしくないかもしれません。というのも、天才からわれわれが学ぶことはあまりなく、「すごいな」で終わってしまうからです。けれども、彼は非常に苦労と努力を重ねて、あの域に到達した人物です。だからこそ、われわれは彼から多くを学ぶことができる、そういう良い教材として扱った方が良いと思います。


●ダ・ヴィンチ家とレオナルド出生の真実


 彼は、ヴィンチ村という所で生まれます。ヴィンチ村は、イタリア語でダ・ヴィンチなので、これが彼の姓として代用されているのです。正確には姓ではないのですが、苗字の代わりをしていたのです。これは昔の日本と同じで、よほどの王侯貴族でなければ、苗字など普通の人には付いていませんでした。

 これは彼が5歳の時の税の申告記録なのですが、ダ・ヴィンチ家の当時の当主であるアントニオというおじいさんが書いたものです。1行目と2行目にアントニオとその妻、ノンナルチアと書いてあります。年齢も85歳と64歳と書いてあります。21歳も差があるのですが、これは当主として当たり前の姿です。

 これは、Tornabuoni家というフィレンツェの名家の娘が出産の際に命を落とした時の姿で、母子彫刻としてヴェロッキオという人が彫ったものです。ちなみにヴェロッキオは、レオナルドが弟子入りした先生に相当します。出産時に命を...

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