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エネルギー・IT・農業、日本の成長のための課題総まとめ

これからの日本へ~異次元的成長戦略の提案

島田晴雄
慶應義塾大学名誉教授/テンミニッツTV副座長
情報・テキスト
高齢化、人口減少の他にも、日本はエネルギー、IT、農業その他、多くの分野で大きな課題を抱えている。今、日本はどのような課題を抱えているのか、再度分析、整理し、そのために日本は何を成すべきなのかを問いかける。今後の日本の成長のための島田晴雄氏、渾身のメッセージ。(2015年1月26日開催島田塾第120回勉強会島田晴雄会長講演「年頭所感 アベノミクス 2年間の経験とこれからの日本経済」より、全10話最終話)
時間:11:44
収録日:2015/01/27
追加日:2015/03/05
≪全文≫

●エネルギーは、まず原発問題の情報開示から

 
 今回は、日本が成長に向かうための課題項目を、あと九つぐらい頭出しだけしておきます。

 まず、エネルギーです。確かに、原子力発電、化石エネルギーは日本を成長させました。ですが、福島事故を見て、あれは欺瞞だということが、全て分かってしまいました。

 私は、まだ30基弱くらいは使えるのだから、即刻使わせてやるべきだと思います。ただ、国民は納得しないでしょう。なぜなら、日本の技術は最高、管理は最強と言ってきたのに、福島で全部、それが覆されてしまいましたから。欺瞞です。ですから、政権担当者は、まず謝罪から始まって、情報を全部、国民にお伝えするべきです。今、規制改革会議の委員に任せているのは、私は少し問題だと思いますね。規制改革会議のメンバーは科学者なので、科学者に国の未来の責任を取れと言っても無理ですよ。原発に関しては、国民に選ばれた政治家が決めるべきです。今のやり方はおかしいと思います。科学者に任せるから、何十万年前の活断層など、とんでもないことを言うわけで、そういった問題ではないと思いますね。


●有望なのは北海道・東北での風力発電

 
 日本は、今から40年ほど前にオイルショックがあり、「サンシャイン計画」をつくって、太陽光発電も風力発電も、日本が技術の最先端を行ったのです。それが今や、残念ながら世界の最後尾です。ですから、やればできるのです。中国は、3年前に1万基も風力発電機を建てているのです。日本では2000基弱しか建っていませんが。

 風力発電に関しては、「島田塾」の山崎養世さん(一般社団法人「太陽経済の会」会長)が、非常にいい計画を持っています。土地が空いていて風がぶんぶん通る所は、北海道と東北です。ここで自然エネルギーを開発すれば、すごい余剰が出ます。ただ、送電線が弱いのです。東電が持っているものは、東京に運ぶために強いのですが、地方はめちゃくちゃ弱いのです。

 北海道や東北に高圧線をはわせると、何が起きるかというと、地主が反対して10年ぐらい出来なくなってしまうのです。そこで山崎さんが出したアイデアはさすがです。高速道路にはわせたらどうだろうというもので、これなら1年で高圧線をはわせることが出来るのです。

 石破茂さんと話した時、「地方創生と言うのなら、こうした骨太の計画を後ろに持つべきだ」と言いました。普通、全国が見えにくい地方からはアイデアが出にくいものですから、中央でそうした大計画を立てて、その枠組みを見せてあげて、その中で頑張ってください、と言えばいいのです。


●「面」で地方を豊かにする自然エネルギー

 
 このような状況ですから、日本は、原発はまず復活させるけれど、15年ぐらいは実験稼働以外はなしにして、その代わり全部自然エネルギーにして、徹底的に消費地が払うようにすれば良いのです。

 そうすると、どういうことが起きるかというと、例えば、今の買い取り価格の半分の価格でも、東北、北海道で風力発電で出せば、そこから得られる収益は米から得られる収益の倍以上あるのです。ですから、これを徹底的にやると逆転します。つまり、今の発電は化石も原発も全部工場生産ですから、「点」なのです。ところが、自然エネルギーは、電波や風や海など全て「面」ですから。面で過疎地が豊かになる時代が来るのですね。本気でやってみたらいいじゃないか、という気がします。

 

●徹底性が鍵となるIT改革


 それから、ITもそうです。ITは今、通信から進んでいますが、産業も生活も全部ITで変わります。ただ、本当に変えるためには、教育の中身も行政も社会インフラも全部、スタートアップのような起業も徹底的にITが出来るようにしてやるということでなくてはいけません。

 楽天の三木谷浩史さんが「新経済連盟」というのをつくりましたが、なかなかいい根性だと思います。やはり先を見て、「もう今の経団連には任せておけない」と判断したのでしょう。ですから、そういう思い切ったことでがんと変えなければいけないですね。


●産業農業から社会農業への転換が最重要課題

 
 また、農業はどうかというと、ここまでいろいろと言いましたが、減反廃止も正しいし、農協改革も正しいし、農地改革も正しい。ただ、最大の問題は、日本の販売農家は約200万軒あるのですが、米作農家が165万軒、専業米作は30万軒です。そのうち、5万軒ぐらいが年収1000万円以上です。専業以外の135万軒は何をやっているのかと言えば、年齢70前後で後継者がいない、農業年収は100万円いくか、いかないかです。しかし、この人たちはれっきとした農協の組合員なのです。昔の票田が1500万票あった時代の名残ですから。完全に政治の犠牲者です。

 この人たちを...
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