「イスラム国」と中東の変動
この講義シリーズの第1話
登録不要無料視聴できます!
第1話へ
▶ この講義を再生
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
(会員の方に広告は表示されません)
中東諸国の国益が交錯し、より有利な影響力を諸外国は模索
「イスラム国」と中東の変動(2)「冷戦」復活という見立て
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
中東情勢に詳しい歴史学者・山内昌之氏によれば、中東の大変動は、かつての同盟・協力関係も劇的に変化させた。今までの同盟関係の崩壊に代わり生じているのが対ISのつながりだ。しかし、これも単一に語ることができないのが中東の複雑さなのだ。この複雑性はどこから生まれるのか、また、どのような構造変化をもたらしていくのかをひも解いていく。(シリーズ講話第2話目)
時間:6分49秒
収録日:2015年2月25日
追加日:2015年3月7日
カテゴリー:
≪全文≫

●中東構造、三つの大きな変動


 前回、お話したようなことを踏まえてみますと、中東全体で大きな変動が起きているというように考えてよろしいでしょう。

 その第一は、これまで20世紀において中東における最も重要な政治的な焦点とは、アラブとイスラエルとの間の紛争、すなわちパレスチナ問題を核としたアラブ・イスラエル関係でした。しかし、パレスチナにとっては誠に残念なことに、パレスチナ自身の中においても、ファタハを中心とする自治政府と、ガザのハマスの地方権力との間の対立があるということも相まって、パレスチナ問題が国際的な関心から大きく後退するようになってきたということです。

 二つ目は、1980年のイラン・イラク戦争以降顕著になった、スンナ派対シーア派という対立関係が深まってきたということです。これは、さらにアラブの穏健派の国々対急進的な国々、あるいはシーア派のイランといった急進的なイスラム国家との対立という構造をつくり出したわけです。

 三つ目の構造は、「アラブの春」によって顕著になった、アラブ各国の中の国内対立です。

 20世紀は、パレスチナ問題こそが中東の中心で、世界の耳目を集めており、クルドの問題は影が薄かったのです。しかし、20世紀から21世紀にかけて、パレスチナ問題とクルド問題との間に、隠れた変化が生じました。それは、自分たちの国家を持たない、世界でも最大の民族集団であるクルド民族が、20世紀は無視されてきたにもかかわらず、いまやアメリカを含めてメディアや政治家、そして研究者たちの重要な関心の焦点になってきたということです。


●劇的に変化した中東の同盟・協力関係


 私が言いたいことは、つまり、一部において存在していた中東の同盟関係や協力関係が劇的に変化したということです。一番顕著なのは、トルコとイスラエルとの間にあった、特に国防軍を中心としてつくられていた同盟関係が崩壊したということです。トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領という、すこぶるイスラム主義的な装いの強い政権と、外相だったアフメット・ダーヴトオール現首相に象徴されるようなイスラエルに反発するアラブへの接近外交。そうしたことにより、トルコとイスラエルの間の同盟、友好関係は崩壊したのです。

 もう一つは、エルドアン大統領とシリアのバッシャール・アル=アサド大統領との間にあ...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
(会員の方に広告は表示されません)
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
地政学入門 ヨーロッパ編(1)地図で読むヨーロッパ
ヨーロッパとは?地図で読み解く地政学と国際政治の関係
小原雅博
お金の回し方…日本の死蔵マネー活用法(1)銀行がお金を生む仕組み
信用創造・預金創造とは?社会でお金が流通する仕組み
養田功一郎
危機のデモクラシー…公共哲学から考える(1)ポピュリズムの台頭と社会の分断化
デモクラシーは大丈夫か…ポピュリズムの「反多元性」問題
齋藤純一
経済社会と「隠れた価値」の行方(1)経済の中の価値
人間の幸福と「価値」…お金以外の「隠れた価値」をどう考えるか
吉川洋
民主主義の本質(1)近代民主主義とキリスト教
なぜ民主主義が「最善」か…法の支配とキリスト教的背景
橋爪大三郎
内側から見たアメリカと日本(1)ラストベルトをつくったのは誰か
トランプの誤謬…米国製造業を壊した犯人は米国の経営者
島田晴雄

人気の講義ランキングTOP10
戦前日本の「未完のファシズム」と現代(1)シラス論と日本の政治
独裁ができない戦前日本…大日本帝国憲法とシラスの論理
片山杜秀
資本主義の再定義…哲学で考える(3)害なき利とコミュニティの時代
強欲資本主義は死んだ…他者を助けることのできる他者を助ける
中島隆博
編集部ラジオ2026(26)お盆とあの世を考える
【10min解説】特集で考える《お盆とあの世》の本質
テンミニッツ・アカデミー編集部
死と宗教~教養としての「死の講義」(5)仏教の死:日本編
極楽往生、坐禅、法華経…日本人はいかに死を乗り越えるか
橋爪大三郎
ラフカディオ・ハーン『神国日本』を読む(1)なぜ『神国日本』なのか?
ラフカディオ・ハーンが解明した「美しい日本」の秘密と未来
賴住光子
日本の財政の真実を検証する(7)AIと長寿化&質疑応答
AI時代にこそ「熟達者の経験」が生きる&現状の日本経済の実情は
宮本弘曉
教養としての「ユダヤ人の歴史とユダヤ教」(1)ユダヤ人とは誰のことか
ユダヤ人とは?なぜ差別?お金持ち?…『ユダヤ人の歴史』に学ぶ
鶴見太郎
大統領に告ぐ…硫黄島からの手紙の真実(1)ルーズベルトに与ふる書
奇跡の史実…硫黄島の戦いと「ルーズベルトに与ふる書」
門田隆将
なぜ働いていると本が読めなくなるのか問答(1)読書と教養からみた日本の近現代史
『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で追う近現代史
三宅香帆
昭和の名将・根本博…台湾での恩義の戦い(2)情報畑の人びとの「情の厚さ」
情に厚くなければ情報工作はできない…明石元二郎の対露工作の教訓
門田隆将