「イスラム国」と中東の変動
この講義は登録不要無料視聴できます!
▶ 無料視聴する
この講義の続きはもちろん、
5,000本以上の動画を好きなだけ見られる。
スキマ時間に“一流の教養”が身につく
まずは72時間¥0で体験
IS、クルド、そして人民が中東世界を大きく変容させる
「イスラム国」と中東の変動(1)旧体制に反旗を翻す三大勢力
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
歴史学者・山内昌之氏は中東の混迷状態を「大きなパラダイムシフト」と表現する。さまざまな勢力争いで中東が混戦しているというよりも、大局的にみて新旧イスラムイデオロギーの入れ代わりが、中東世界を根底から変えつつあるのだ。20世紀から21世紀にかけてのいくつかの転換点を示しつつ、中東の大変化を解説する。(シリーズ講話第1話目)
時間:15分10秒
収録日:2015年2月25日
追加日:2015年3月6日
カテゴリー:
≪全文≫

●中東の変革の核となる現象-イスラム国

 
 皆さん、こんにちは。中東情勢がますます混迷を深め、かつ、今後の情勢の展開が複雑さを増してきています。私は、中東の情勢を考えるにあたり、大きなパラダイム変換が起きているということ、つまり、ものを見る目の枠組みだけではなく、対象そのものが大きな変容を遂げているということを、まず大づかみに理解しないと、大局的には理解できないと考えています。イデオロギー、社会、政治、地政学、そして戦略、あるいは軍事、こうしたさまざまな領域において、世界で一番大きな変革を遂げているのは、中東であろうかと思います。

 この中でも一番印象的なのは、「イスラム国」と呼ばれる現象です。このイスラム国現象はご案内のように、シリアとイラクとの間の国境や、境界を無視することによって、新しい地域が現出したと考えてよろしいかと思います。

 日本政府は「イスラム国」というように「国」という名前を使うと、あたかも、独立国家、あるいは承認した国家のようなニュアンスがあるから使わないということで、もともとの組織名の略である「ISIL」を使っていますし、また、NHKは普通、“イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」”というように呼ぶようです。それぞれの立場もありますので、そのこと自体は間違ってはいないのです。

 しかしながら、そういうことを言う反面、あまり窮屈に考えると、実際に起きている現象、すなわち中東においてこのIS(ISIL)が支配し、彼らが君臨している地域が、イラクとシリアのまたがる砂漠地域を中心に厳然と存在しているという現実から目を背けるということも許されないのでありまして、そこに注意する必要があります。


●新イスラムイデオロギーとして発展したIS

 
 いずれにしましても、このISの発展は、最近になって急浮上したのではなく、長い間の変化の結果だということを見ておかなければなりません。イデオロギーのレベルで申しますと、古いアラブ社会主義、あるいは社会主義へのアラブの道といったナーセル(アラブ連合共和国初代大統領)時代の社会主義的な現象、これが消滅する、あるいは古ぼけてくる。それから、パン・アラブ主義、汎アラブ主義や愛国主義というようなイデオロギーが衰える。それによって残された真空が、新旧のイスラム主義、新しい種類であれ古い伝統的なものであれ、ともか...

スキマ時間でも、ながら学びでも
第一人者による講義を1話10分でお届け
さっそく始めてみる
「政治と経済」でまず見るべき講義シリーズ
日本人が知らないアメリカ政治のしくみ(1)アメリカの大統領権限
権限の少ないアメリカ大統領は政治をどう動かしているのか
曽根泰教
外交とは何か~不戦不敗の要諦を問う(1)著書『外交とは何か』に込めた思い
外交とは何か…いかに軍事・内政と連動し国益を最大化するか
小原雅博
台湾有事を考える(1)中国の核心的利益と太平洋覇権構想
習近平政権の野望とそのカギを握る台湾の地理的条件
島田晴雄
習近平中国の真実…米中関係・台湾問題(1)習近平の歴史的特徴とは?
一強独裁=1人独裁の光と影…「強い中国」への動機と限界
垂秀夫
中国共産党と人権問題(1)中国共産党の思惑と歴史的背景
深刻化する中国の人権問題…中国共産党の思惑と人権の本質
橋爪大三郎
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏

人気の講義ランキングTOP10
「アメリカの教会」でわかる米国の本質(1)アメリカはそもそも分断社会
「キリスト教は知らない」ではアメリカ市民はつとまらない
橋爪大三郎
豊臣兄弟~秀吉と秀長の実像に迫る(2)秀吉の実像と「太閤神話」
秀吉・秀長の出自は本当は…実像は従来のイメージと大違い
黒田基樹
逆境に対峙する哲学(1)日常性が「破れ」て思考が始まる
逆境にどう対峙するか…西洋哲学×東洋哲学で問う知的ライブ
津崎良典
熟睡できる環境・習慣とは(1)熟睡のための条件と認知行動療法
熟睡のために――自分にあった「理想的睡眠」の見つけ方
西野精治
戦争とディール~米露外交とロシア・ウクライナ戦争の行方
「武器商人」となったアメリカ…ディール至上主義は失敗!?
東秀敏
平和の追求~哲学者たちの構想(6)EU批判とアメリカの現状
理想を具現化した国連やEUへの批判がなぜ高まっているのか
川出良枝
「重要思考」で考え、伝え、聴き、議論する(1)「重要思考」のエッセンス
重要思考とは?「一瞬で大切なことを伝える技術」を学ぶ
三谷宏治
編集部ラジオ2025(32)哲学者たちが考えた平和追求
反EU、反国連の時代に再考!「哲学者たちの平和追求」
テンミニッツ・アカデミー編集部
何回説明しても伝わらない問題と認知科学(1)「スキーマ」問題と認知の仕組み
なぜ「何回説明しても伝わらない」のか?鍵は認知の仕組み
今井むつみ
組織心理学とは何か~『武器としての組織心理学』と概論
なぜ組織に「心理学」が必要か?多様化と個の時代の処方箋
山浦一保