●国有企業改革が徹底できなければ競争力低下へ
さて、そのように中国市場は非常に重要なのですが、以前に申し上げたように、中国は、2020年前後に高度成長が終わる可能性が極めて高いのです。それ以降、安定成長に移行した後には、リスクが待っています。
中国は、2005年以降、経常収支の黒字をしっかりと維持しています。これは、輸出競争力を十分に高めたからですが、中国が今取り組んでいる国有企業改革を今後、徹底して実行できないとなると、中国の輸出競争力は、徐々に低下していく可能性があると指摘されています。これが、今最も心配されている一つ目のリスクです。
もし、国有企業改革がうまくいかないとどうなるか。日本の国有企業改革の事例で考えてみますと、国鉄(日本国有鉄道)、郵政、電電(日本電信電話公社)が、かつて三公社五現業といわれていた国有企業の中の代表的な改革対象企業でした。
国鉄は、JRへの転換を図り、ある程度成功していますが、電電に関しては、NTTに変わり、電電ファミリーになったNEC、富士通、沖電気をみても、かつての輝きはかなり失われており、国際競争力は、かつてなら十分戦えていたサムソンやヒューレットパッカードなどの企業に比べると、かなり脆弱な体質になっていることも明らかです。これは、電電公社の国有企業改革がいかに難しかったかを示しています。郵政に至っては、いまだに昔とほとんど変わらない営業活動を続けていますので、これはもう箸にも棒にもかかっていないと言っていいと思います。その意味で、日本でも、国有企業改革は非常に難しいのが現状です。
●国有の主要産業が多い中国にとって改革は試練
これに対して、中国の国有企業改革は、日本に比べると非常に幅が広いのです。先ほど日本の主な国有企業を三つほどお伝えしましたが、中国も同じで、そこに当たる鉄道、通信国有、郵政は、いずれも国有です。しかし、中国は、それ以外にも数多くの国有企業を抱えています。例えば、金融、物流、鉄鋼、造船、石油化学など主要産業は軒並み国有企業です。
そういう企業が今後もし、日本の電電公社ほどの改革しかできない、もしくは、最悪の場合、日本の郵政のようになってしまうと、競争力は大幅に失われていく可能性があります。もちろん、足元では、先行きにかなり希望が持てるガラス産業のように、国有企業改革の兆...