●対中直接投資の数字が示す日本の独走態勢
中国において、二度とない黄金時代が到来しているという変化を、日本企業はすでに捉えています。
「国別対中直接投資金額」のグラフで見ると、2011年以降、青い太い実線で示した日本企業の対中直接投資は、急速な増加を示しています。2011年以降の3年間でかなり高い伸びを示しているのに対して、他の国ではまだそれほど高い伸びは示していません。
それは、やはり中国人がGDP1人当たり1万ドルに達したところで、急速に日本製品に対する需要を伸ばすという特質の表れでしょう。他国の企業は、それほど中国との連携が緊密でなかったり、または価格帯に広い幅があったりします。1万ドルに達したから急に需要が伸びるようなことは、日本ほど均質な経済を持たない他国経済には当てはまらない。そのために2011年以降、日本企業が突出して急速な伸びを示しています。
ただし、このグラフには実は1年のタイムラグがあります。グラフの数字が伸びているのは2011年からですが、実際にはすでに2010年から日本の企業の対中投資が増え続けているということです。
●尖閣諸島をめぐって表面化した日中関係のリスク
さて、一番右端で折れ線グラフは大きく折れ曲がっています。2014年の数字が下がっていますが、実際には2013年の数字がこのように大きく下がりました。原因は、尖閣諸島の問題です。
尖閣諸島をめぐる問題によって反日デモが起き、いろいろな日本企業のチャイナリスクを意識する感情が非常に先鋭化しました。結果として、日本の企業は急速に対中投資を抑えました。しかしながら、その後、中国の市場の拡大は続くわけですから、日本の企業は徐々に対中直接投資を回復させつつあります。
このグラフで見ると、2014年の1月から11月は、前年比マイナス40パーセントほどの下落になっています。実際10月まではかなり大幅に、前年比マイナスが続いていました。しかし、11月になって、前年比プラス30パーセントを上回る伸びを示し始めていますので、これから対中投資はプラスの局面を迎えるのではないかと考えられています。
なぜか。これは非常に単純な話です。先ほど申しましたように、もう二度と来ない2010年代の黄金時代を目の前にして、日本企業はそのチャンスをみすみす見逃すはずはないと考えられるからです。
ただ、今回の尖閣諸島をめぐる日中関係のリスクの表面化は、日本企業にとっても非常に深刻でしたが、中国政府にとっても大きな懸念材料を与えました。その結果、一昨年の2013年12月26日に安倍総理の靖国参拝が行われたにもかかわらず、中国政府は日本に対する反日デモは一切やらせなかった。それから、経済制裁も行わなかった。「政治は政治、経済は経済」という姿勢を、昨年の年頭から非常に明確に打ち出してきています。
日本企業も、中国が明確に政権分離の方針を提示したことに好印象を受け、その後、対中投資を回復させつつあります。ただ、その結果は2014年の数字に現れるため、このグラフに実際に出てくるのは2015年以降に持ち越します。
●中国人の日本旅行ブームが日中の経済関係を象徴
このように、日中関係が徐々にまたいい方向に向かいつつある中、APEC(アジア太平洋経済協力)会議中に首脳会談が行われました。そこで、日中の経済関係が一段といい方向に向かうことに対して、期待が持てるものと考えられます。
そうした日中の経済関係の良好な状態を象徴する出来事があります。中国人の間での日本旅行ブームです。
去年の2014年1月から11月に日本を訪問した中国人の観光客数は、222万人(前年比プラス82パーセント)という驚異的な伸びを示しています。その前年が131万人ですから、1年間で90万人以上も日本を訪問する人が増えています。このままいくと、年間240万人を超えるペースで伸びてきているのです。
中国人の旅行者は、非常に大きな特徴があります。たくさんお金を使うことです。それが日本に、歴史的な変化をもたらしました。昨年度の旅行収支が、5月、7月、10月の3カ月でプラスに転じていることです。これは1970年4月、大阪万博が始まった月の翌月に旅行収支が黒字になって以来の出来事です。来年は、ひょっとすると、通年でも日本の旅行収支がプラスになる可能性があると言われています。
旅行収支とは、日本人が海外で使う金額と、外国人が日本で使う金額の差額です。今までずっと日本が使う額の方が多かったのが、今年からはついに中国人を中心とした外国人が日本で使うお金の方が多くなる可能性が出てきた。これが現状を象徴する一つの出来事です。
その他にも、代表的な日本企業である日産、ホンダ、ト...