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平均年収1万ドル超の都市人口は2020年7~8億人へ

日本企業の黄金時代到来(1)リスクの前にチャンスを

瀬口清之
キヤノングローバル戦略研究所研究主幹
情報・テキスト
2020年代に迎える中国のリスクを見てきたが、だからといって撤退するのは気が早い。どころか、世界市場での敗北をも意味すると、キヤノングローバル戦略研究所研究主幹・瀬口清之氏は指摘する。リスクの前の数年間、2010年代の現在こそ、日本企業にとって「二度と来ない黄金時代」だと言うのだ。(全15話中第10話目)
時間:08:34
収録日:2015/01/05
追加日:2015/03/24
タグ:
≪全文≫

●中国リスクを目前に、撤退不能の日本企業


 これまで見てきたように、中国のリスクは2020年代の将来に控えています。では、日本としては、そういうリスクを持つ中国市場とどう付き合っていけばいいのか。ここからは、そのご説明をしたいと思います。

 まず、消極的な発想に立てば、2020年以降に中国でそんなリスクがあるのであれば、もう今から中国以外のマーケットに行こう、中国からは撤退しようということも、一つの考え方としてあり得ると思います。ただそれは、中国の経済が「もしも」小さな経済であれば、可能になる選択肢です。そして、それができないのが、中国経済の難しさです。

 というのも、中国経済は2009年には日本に追いつき、昨年(2014年)に日本の2倍に達し、2020年には3倍になっていて、2020年代半ばにはアメリカをも抜いていくという巨大市場です。そういう巨大市場から「逃げる」というチョイスをすれば、世界市場でも当然負けてしまいます。

 もちろん中堅中小企業であればニッチのマーケットで勝負することも可能ですが、日本を代表するグローバル企業が、中国のマーケットで負けたということになれば、中国に代わる巨大市場が他にない以上、世界で負けることを意味します。したがって、日本のグローバル企業にとって、中国から逃げるというチョイスはあり得ないものなのです。


●リスクへの答えは深圳ですでに出ていた


 それでは、リスクが出てくることの明らかな中国市場には、どう立ち向かっていけばいいのか。実は日本企業は、すでに深圳でその答えを出しています。

 深圳という地域は、かつては安くて豊富な労働力を武器に、低いコストでの生産によって世界の輸出基地になっていた所です。しかし2005年以降、人民元高、賃金高に加え、輸出優遇税政の大幅削減が実行されました。そのため、急速に生産が悪化する状況が生じたのです。

 その結果、日本は「チャイナ・プラス・ワン」と言われるASEAN諸国に生産拠点をどんどん移転していったわけなのですが、どういう企業が最初に移転していったかというと、最も業績の良かった企業から順に移転をしています。

 業績の良かった企業は当然内部留保をたくさん持っていますので、潤沢な財政力を使ってASEANの一番環境の良い所に工場を建てて、中国から移転したり、中国拠点も残したまま、次の拠点を拡大するということをやってきています。

 それに対して、業績の良くなかった企業は、そんな余裕がありません。コストが高くなった、本当は移転したい。でも、余裕がないから、仕方なく中国にとどまらざるを得ないという状況が続きました。そして、ついに最近になると、どうしようもなくなった企業が、本当に倒産に追い込まれるという事態が起きています。


●この先、日本が中国で迎えるチャンスとは


 こういうことを考えると、2020年以降の中国にリスクがあるとしても、それまでの中国で勝負をして大きな利益を稼ぐ。そこで2020年以降のリスクに備えるというのが、日本企業としては最もベストな選択であると言えようと思います。

 さて、その中国経済について、中国の高度成長期が終わる2020年代にまでにどんなチャンスがあるかを考えてみましょう。以前、GDPの数字を申し上げましたが、日本企業にはさらに大きなチャンスがあります。

 「一人当たりGDPが1万ドルを超える主要都市一覧」の表を見ていただくと、各年ごとに一人当たりのGDPが平均1万ドルを超えた都市名がずらっと並んでいます。かっこの中は、その都市の人口を示します。

 一人当たりGDPが1万ドルの所をなぜこれだけ示したのかというと、日本企業にとっては一人当たりGDPが1万ドルを超えれば、その地域でお客さんが急増することが経験的に知られているからです。


●年収1万ドル超の中国人は、最高の顧客


 年収1万ドルを超えた中国人の行動には何が起こるのか。例えば赤ちゃんが生まれると、それ以前は中国のミルクを飲み、中国の哺乳瓶を使っていた人たちが、日本の粉ミルクを使い、日本の哺乳瓶を使うようになります。

 部屋の空調は、日本のダイキン製エアコン。マンションのエレベーターは、三菱エレベーターに代わる。空気清浄器はシャープを使う。そして、週末には回転寿司を食べに行ったり、1杯10元の中国製ラーメンではなく、日本から進出してきた1杯30元の日本のラーメンを食べに行く。もちろん車も、日本車にどんどん乗るようになる。

 そのような恰好で、一人当たりのGDPが1万ドルを超えたあたりから、日本の製品やコンビニエンスストアのような日本のサービスが急激に取り入れられるようになることが、中国の持つ特徴として知られています。

 そこで、一人当たりGDP...
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