サウジアラビアがイエメンを空爆した背景
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ハウシーやイラン革命防衛隊はレッドラインを越えた
サウジアラビアがイエメンを空爆した背景
山内昌之(東京大学名誉教授/歴史学者/武蔵野大学国際総合研究所客員教授)
イランは、ローザンヌ合意で巧みな外交力を発揮し、中東の地政学を大きく変動させつつある。しかし、中東には歴史的な「怨恨ゲーム」が根付いているため、問題は複雑だ。中東・イスラーム地域研究、国際関係史を専門とする歴史学者・山内昌之氏が、沸騰する中東情勢、失われた秩序回復への可能性について解説する。
時間:11分03秒
収録日:2015年4月7日
追加日:2015年4月17日
カテゴリー:
≪全文≫

●ローザンヌ合意にみるイランの外交的力量


 皆さん、こんにちは。前回に引き続き、イランとアメリカ、あるいはイランの地政学的な問題について考えてみたいと思います。

 イランが、現在の中東において地政学的な野心を持っているということは、この間の動きでますます明らかになっています。そもそも、今回のローザンヌ合意によって、イランの核武装化という中東最大の脅威が短期的には抑えられたにしても、イランのレバノン、シリア、イラクにおける優位性や影響力には、全く揺るぎないものがあります。むしろ、アメリカに核の平和利用や濃縮されたウランの所有権を既成事実として認めさせたイランの外交的力量は、今後の南レバノンのヒズボラ、シリアのアサド政権、そしてイラクのアバディ政権といったシーア派系のパワーが、アラブのスンナ派の多数派と対決する際に、格好の有力な材料になります。

 また、イランとシーア派との間に、シーア派という宗派を丸ごと浄化して一掃しようとする宗教浄化(セクタリアン・クレンジング)の動きを繰り広げているイスラム国(IS)の存在があります。このISと、もう一方において対決しているのはアメリカです。すなわち、イランは今回の合意によって、ISと対決するアメリカにも恩を売るようなセットをつくり上げたのです。それに引き替え、スンナ派のアラブの国々やそれらの国々のキーパーソンや政治指導者たちの分裂や雲散霧消ぶりは、誠に目を覆いたくなるほどの惨状です。


●サウジアラビアのウィークポイント-イエメン


 もちろん、このスンナ派の国々も、黙って座視しているわけではありません。アブドラ国王が亡くなり、後を継いだサルマン国王のサウジアラビアは、陸軍の大兵力を動員し、かつ戦闘機の運用も行っています。そして、エジプトや湾岸諸国の一部からの戦闘支援も受けながら、イエメンに軍事干渉したことは、周知の事実です。

 このイエメンのハウシー集団なるシーア派系のグループやそれを支援、指導しているイランの革命防衛隊の現地部隊と、サウジアラビアをはじめスンナ派のアラブ諸国の軍との間に、現在、戦争が行われているということは、きちんと見ておかなければなりません。つまり、サウジアラビアがなぜこのような挙に出たかというと、これは、イエメンがサウジアラビアにとってのレッドラインだったということを意味します。

 サ...

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