●躍進するコンビニのプライベートブランド展開
コンビニエンスストアは、相変わらず非常に大きなパワーを持って、どんどん成長を続けています。ここ5年、10年における日本の流通を見ると、やはりコンビニの動きがその原動力になっている面が非常に強いだろうと思われます。
そこで、コンビニの強さはどこにあるのか、さらにコンビニはいま何を追求しようとしているのかについて、最近のいくつかの動向を見ながらお話をさせていただきたいと思います。
現在のコンビニの一つの重要な特徴に、プライベートブランド(PB)やストアブランド(SB)を非常に積極的に展開しようとしていることがあります。一番有名なのはセブン‐イレブンで、「金の食パン」をはじめとした高級なイメージのSBの開発に、大変成功してきたわけです。セブン‐イレブンだけではなく、ローソンやファミリーマートなどもそうで、コンビニが自主ブランドを全面に出そうとする動きが非常に目立ちます。
●ユニクロと似た展開で、流通がメーカーを支配
これは、ちょうどユニクロが自前のブランドの開発・生産・流通の全てを管理して行うことで大成功したのと、よく似ています。これをSPAモデルと言いますが、同じような位置付けでとらえられることが多いと思います。
そのポイントは何かというと、チャネルリーダーのポジションが、メーカーから小売業に移ったことです。特にコンビニの場合はチャネルリーダーとして強い力を持ち、さらに商品の開発から流通までを自分の支配下に置くことによってより高い付加価値を自分のところに持とうというかたちになります。
現実に、飲料や加工食品等の世界では、一部のコンビニや大手スーパーの持っている支配力が非常に大きくなっています。そこで、メーカーの方でも、そうした小売業からのPBに対する要求に対して、ある程度は答えていかざるを得ないということだと思います。
●アメリカのPB価格はNBよりも低めの設定
このPBについてもう一つ申し上げたいのは、アメリカとの違いです。アメリカではPBはもう随分昔からあります。アメリカは日本よりずっと早くから小売業の寡占化が進んでおり、小売業の交渉力が強くなっているために、各地で小売業が自らのPBを積極的に展開していきました。ただ、通常アメリカの小売業のPBは、メーカーが提供するナショナルブランド(NB)に比べると少し安い値段のものが多くなっています。
つまり、「同じ品質ではあるが、メーカーブランドよりは少し安く提供します」ということで大量に売り、利益を確保しようというのが、アメリカのPBの特徴だったわけです。
日本のPBは、そこが少し違います。特に最近コンビニなどで展開されている動きを見ると、NBよりも少し高い値段の商品を出し、むしろそれが成功しているケースが結構あるわけです。先ほど言ったセブン‐イレブンの「金の食パン」は、その一番有名なケースです。
●20年のデフレの中で安売りされてきたNB
これは、デフレから脱却しつつある日本経済という、非常に特殊な事情が背景にあるのだと考えられます。
20年近くデフレ的な状況が市場に続く中で、メーカーは自らの販売を維持するために、かなり激しい値下げを行ってきました。あるいはメーカー自身が値下げしなくても、店頭ではメーカーブランドの商品が非常に安い価格で売られています。
メーカーブランドやナショナルブランドのものが、店頭でどんどん安値で売られることが20年続いた結果、残念ながらNBのブランド価値は非常に地に落ちてしまいました。
かつては、NBの商品は非常に安心がおけるし、品質もいいから、多少値段が高くても買おうという意識を持った消費者が多くいました。ところが、今やナショナルブランドでも、「いつでも安売りで買えるんだ」となってしまい、なかなか厳しい状況です。
●コンビニPBの価値は、「値引きなし」
しかも、世の中は次第にデフレ脱却に向かい、商品の値段を上げなければいけない状況に来ています。ところが、もう地に落ちたNBの商品の場合、値段を上げても売れるとは言い切れません。小売業、特にコンビニが行っている高め価格のPBの動きというのは、ある意味で、この間隙を縫ったようなところがあります。
つまり、これまでの安売りの泥にまみれていない「まっさら」な商品という位置に、コンビニが新たに展開するPBが入り込んでいる。非常に品質がよく、したがってある程度高い価格でも売ってもらえる。それが結果的に成功してしまっているわけです。
ですから、日本がデフレから脱却しつつあることが、小売業、特にコンビニのPBの動きにさらに拍車をかけているということが重要だろうと思います。