●値波乱しつつも急上昇した中国株
今日は中国の話、特に最近の株価の急上昇とその背後にあるマクロ経済的な動き、若干政策的な動きについて触れてみたいと思います。
まずこちらをご覧いただきたいと思いますが、これは中国の上海の株価指数です。これは去年(2014年)の暮れ、11月くらいからデータを出していますけれども、あっという間に半年くらいで2倍くらいに上昇しています。非常に急激な上昇率で、世界中の人が驚いているというところであるかと思います。ただ、ここにきてある種の上値波乱のような動き、つまり、時々急落して、また急回復してということを繰り返しながら、今日(2015年6月16日)も少し下がっていますが、基調としては一応まだ上がり続けているというところです。
●株価上昇の背景と原因について
これはもう少し長い期間で見ますと、このような感じになります。2005年くらいからですが、ご記憶の方も多いかと思うのですが、2007、8年にかけて、やはり1年前後の間に中国株がものすごく上がりまして、3倍くらいにはなっています。ただ、その後リーマンショックもあったということもありまして、やはり1年くらいでほとんど元の水準に戻ってしまうという、これだけを見ますと、典型的なバブルのような動きを示していたわけです。その後5年くらいずっと低迷を続けまして、今回また2倍くらいに上がったというところであるわけです。
しかし、中国の経済がこういう株価の上昇を正当化するほど強いかというと、決してそうではありませんで。先ごろ発表されましたGDP統計を見ましても、第1四半期は、対前年比で7パーセント成長。IMF(国際通貨基金)は、今年全体の成長を6.8パーセント台と予想しています。
この7パーセントという数字は、リーマンショック直後以来の低さという非常に低い成長率になっていますし、これは対前年比では7パーセントですが、一つ前の四半期との対比でいいますと、1.3パーセントしか成長していませんので、ここだけをとりますと、日本よりも低い成長率になっています。
あるいは、もう少し分かりやすい製造業の生産指数をご覧いただきますと、リーマンショック直後の景気対策をやったところはものすごく伸びたわけですが、その後、ずっと低下を続けて、最近は5~6パーセント台というような、中国としては非常に低い伸び率になっています。ですので、足元のここ半年、1年、あるいはもう少し長い期間の短期の経済状態はあまり良くないということで、そういう中で株が上がっているということだと思います。
株が上がっている直接の原因の一つは、このようなことです。銀行の貸出金利ですが、これは中国では政策でコントロールされていますので、結局、このグラフの一番右のところをご覧いただきますと、政策金利の水準が3回ほど直近引き下げられているのです。リーマンショックの後を含めても、現在、一番低いくらいの水準にきています。そこそこの強力な金融緩和政策が採用されて、それもあって株価も上がっているという図式に見えます。
●バブルの懸念と規制強化の難しさ
そうなってきますと、株価の上昇がやはりバブルのようなものなのか、あるいは今後景気や経済が良くなっていって、結果として正当化されるのかというのは、非常に皆さん興味を持たれるところかと思います。アネクドータル(考証に基づかない証拠)な話をいろいろ見てみますと、買っているのは個人中心で、それも信用取引が多い。買っている人たちは、企業業績はあまり見ないで、株の値動きだけを見て買っているという話もあって、心配されるところではあります。
実際、報じられるところでは、政策担当の証券監督管理委員会というところが、株の急上昇を若干苦々しく見ているそうです。株価が急上昇しすぎて、その後バブルの崩壊のようなことになって、金融システム全体を不安定に陥れては非常に困るということから、規制強化をしたいのだけれども、あまり規制強化をしすぎて、それが株価急落の引き金を引くのも怖いということで、非常に悩ましい状態にあるというように言われています。
●成長率低下過程にみる政策意図
そこで、話をもう少し大きくしまして、中国のマクロ経済の状況全体を少し反省してみたいと思います。よく言われますように、少し前の10パーセントを超える成長から、ここのところ7パーセント前後へ成長率が下がってきまして、先にはもう少し下がっていくのではないかと、多くの人が予想しています。
こうした成長率の低下過程は、成長率が下がるだけではなく、特に政策の意図としては、成長ないし経済の質をできれば改善しようという努力と軌を一にしているというようによく言われます。
と言いますのも、一般論として、中...