社会・福祉/科学技術

5G
5G(5th Generation)とは第五世代移動通信システムの略称で、移動体通信や携帯端末などの無線通信に用いられる次世代型通信規格の1つ。携帯電話には第1世代から第4世代までがあり、世代ごとに音声通信、低速データ、高速データ、超高速データ通信による対応サービスを繰り広げてきた。5Gはその上をいく最新型システムとして注目されており、通信速度の高速化、大容量、多数端末との大量接続、低遅延などが特徴として挙げられる。これらの条件を満たすことで、旧世代型通信システムやWiFiとの統合など通信方式の領域拡大や、本格的なIoT(モノのインターネット)のネットワーク構築が可能となる。また、高精細映像やVR(ヴァーチャルリアリティ)による映像配信、他分野における遠隔操作サービスが可能となるため、新たなサービスや産業の活性化も期待される。
5Gはなぜワールドワイドで推進されていったのか
きっかけとなったのは、Cisco(シスコシステムズ)が2017年に発表した、ヴィジュアルネットワーキングインデックス(Visual Networking Index)というネットワークについての予測でした。2017年の統計データからなされた予測によると、2021年には全世界のモバイルユーザーが55億人になるといいます。さらに、モバイル対応のデバイスおよび接続数でいうと、2021年には約120億という凄まじい数になるといいます。 (中略)こうしたなか、皆さんが持っている携帯電話の通信において、もう少したくさんの容量が使えるように変えなければなりません。5Gの推進活動は、こうした動機から始まりました。
中尾彰宏5Gとローカル5G(1)5G推進の背景 (中尾彰宏)

ビジネス・経営/科学技術

宇宙ビジネス
宇宙ビジネスは、主に「輸送」「射場」「衛星」の三つに分けられる。輸送ビジネスは、ロケット開発から宇宙輸送ビジネスまで。イーロン・マスク氏が率いる宇宙輸送のスペースXは国際的ミッションに関わるまでに成長しているし、打上代行は日本でもポッキーロケットでニュースになった。射場ビジネスの「射場」とは、ロケットを発射する施設のこと。ケネディ宇宙センターやジョンソン宇宙センターは人気の観光地となり、宇宙科学の教育啓蒙を行っている。衛星ビジネスは、気象衛星から受け取る天気予報により台風の進路がかなり事前に把握できるようになり、放送衛星は地上波を駆逐した。さらに地図などに必要とされる地位衛星はGPSとしてスマホと連動し、道案内からポケモンGOにいたる領域をカバーする。
宇宙ビジネスは大きくなるしかない領域である
宇宙ビジネスは大きくなるしかない領域だと思っています。そして、絶対に人間は今後、月に行って、火星に行って、というように活動範囲を広げていくと私は考えています。それはコロンブスが大陸を発見したことに近いのかもしれません。(中略)また、宇宙に出ていくというのは、ただ地球の外に出ていくということだけでありません。宇宙の極限状態のなかで人間が住む環境をつくるというのは、地球をより住みやすくすることと同義だと思っています。(岡島礼奈)
岡島礼奈宇宙ビジネスの現在と未来(2)基礎科学の重要性(岡島礼奈・柳川範之対談)

金融・経済/国際

中国巨大テック企業(BATH)
中国巨大テック企業であるBATHとは中国のIT業界をリードする通信会社、バイドゥ(Baidu)、アリババ(Alibaba)、テンセント(Tencent)、ファーウェイ(HUAWEI)の総称。いずれも中国の経済特区深センを拠点としている。成長著しいBATHは、アメリカのGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)と並び称されることも多い。売上げ、利益額ともにGAFAがBATHに圧倒的に勝っている(2018年度比較)が、今後、経済成長が鈍化しているとはいえ人口14億を抱える中国市場を制しているBATHが、GAFAを猛追するという見方も多い。バイドゥがグーグルのような検索エンジン事業からサービス拡大に発展したように、各社ともGAFAの技術、サービスを模倣するかたちでスタートしたが、強力な国家バックアップ体制のもと独自のイノベーションを起こし、新たな価値創造を実現しているのがBATHの強みと評価されている。
巨大な先端テック企業が中国のイノベーション発展を牽引
中国のイノベーションの発展は、まずアリババが「アリペイを開発し、テンセントが「ウィチャットペイ」を開発したことに始まります。この両者の間で、国を二分するような熾烈な競争が起きました。それがモバイル決済を爆発的に普及させます。その結果として、中国は今、世界の先頭を走るキャシュレス社会となったわけです。金融サービスの後進国だったからこその一大飛躍ともいえます。
島田晴雄中国、驚異の情報革命(1)中国DXの躍進 (島田晴雄)

金融・経済

オリンピック後の経済
東京オリンピック・パラリンピックは1964年アジア初の大会として開催され、2020年7月24日からオリンピックが、続く8月25日からパラリンピックが再び東京で開催される。訪日外国人観光客増加による経済効果が期待される一方で、盛夏における都市部での開催による問題など、さまざまなメリット、デメリットが取り沙汰されている。また、オリンピック後の需要の落ち込みによる景気減速を懸念する声も少なくない。事実、経済成長率に関しては、2008年北京オリンピック後の中国、2016年リオデジャネイロオリンピック後のブラジル等、大会終了後に鈍化する国が多い。一方、2012年ロンドンオリンピック後のイギリスのように、堅調な観光客増加を持続し、著しい景気減速を免れた事例もある。
オリンピック後の経済は必ずしも低迷するわけではない
諸外国のオリンピック・パラリンピック後の動きを見ると、常にオリンピック・パラリンピックの後は経済が低迷するのかというと、必ずしもそうではない。よく取り上げられるのはロンドンオリンピック後のイギリス経済です。いわゆる海外からの観光客が途絶えることが少なく、結果的にはそれが景気を下支えする非常に重要な役割を果たしてきたといわれています。(中略)日本についても、東京オリンピック・パラリンピックは世界に向けて、日本、東京の魅力を発信する最大のチャンスであるわけです。
伊藤元重オリンピック後の経済を考える(2)日本の取るべき道(伊藤元重)

政治・国際

アンチ・グローバリズム
アンチ・グローバリズム(反グローバリズム)あるいはアンチ・グローバリゼーション(反グローバリゼーション)は、グローバリゼーションに反対する主張や運動などを指す言葉である。必ずしも統一された思想ではなく、グローバル資本主義に反対するさまざまな社会運動や思想を包括している。1990年代に環境・開発などのNGOや学生、労働者、農業団体などから幅広く支持を集めたが、2010年代後半以降は支持層が様変わりした。欧米で自由貿易など地球規模の枠組みや移民受入れを否定し、自国本位とする風潮が表面化したからだ。アメリカで過激な発言を繰り返したトランプ大統領就任、イギリスによるBREXITの国民投票による可決、ヨーロッパ各地で台頭する極右政党などは、いずれも反グローバリズムから飛び出したポピュリズムとして注目と警戒を集めている。
グローバリズムが濡れ衣を被せられた形でアンチ・グローバリズムが出てきた
グローバリズムの進行した10年間で(中略)最大の問題は、貧乏な人たちの経済的上昇が緩く、もともと財を持っていた人たちがますます豊かになり、格差が拡大してしまったことです。もう1つは、国境が低くなったことに伴って、移民や難民の大きな異動が、特にヨーロッパに向かって始まり、それに対して、昔からの住民や既成権益を持っていた人たちが猛烈なバックラッシュを起こしました。それにより、アンチ・グローバリズムが出てきました。だた、それだけではありません。ちょうどこの時期に、経済のIT化や急激な生産効率の拡大によって、労働が人を選ばなくなりました。そのため、特に製造業で失業する人たちが増えました。この原因がグローバリズムにあり、いずれ海外からの労働者に職を奪われるのではないか、という風潮が出てきました。いわば、グローバリズムが濡れ衣を被せられた形になったのです。(岡本行夫)
岡本行夫アンチ・グローバリズムの行方を読む(1)世界情勢の転換(岡本行夫・伊藤元重対談)

政治・国際

ハイブリッド戦争
ハイブリッド戦争(hybrid war/warfare)は、情報操作や政治工作、経済的圧力などの非軍事的手段と軍事力を組み合わせることで、敵を撹乱させ、敵対する国家を不安定化させ、社会を麻痺させていく重層的な試みである。この言葉が注目を集めだしたのは、2014年にロシアがウクライナ領クリミア半島を占拠し、併合した事件からである。ウクライナの港湾施設等で展開された正体不明の集団によるデモがその起点で、次には携帯電話が通じなくなり、偽のSNSが流れるなどして、全土が大混乱に陥った。さらに大規模な停電が主要都市で起こり、デモ隊がロシアの民兵に変わり、重要施設が占拠されてしまったのである。偵察のためにウクライナ軍の飛ばしたドローンは次々に墜落し、「ロシア軍による侵攻」とウクライナ側が判断して大砲を撃つと、その弾がすべて不発弾として落ちてしまったという。
ハイブリッド戦争とは「今から戦争が始まった」という時点が分からないということ
いちばん恐ろしいのは、ハイブリッド戦争とは「今から戦争が始まった」という時点が分からないということです。いつの間にかやられてしまっている。例えば、平昌オリンピックの開会式の時、作動したウイルスが入れられたのがいつだったのかを調べたところ、開会式の半年ほど前だったそうです。さらに、コンピューターに入るために必要なアクセス権を持つ幹部のパスワード等が盗みとられたのは1年前だったといいます。よって、東京オリンピックになぞらえて考えると、開催に当たって重要なポジションについている者は、すでに現時点で狙われている可能性があるということです。
小野寺五典戦争の常識を覆すハイブリッド戦争にどう立ち向かうか (小野寺五典)

政治・国際

北朝鮮の核問題
北朝鮮は2016年までに4回の核実験を強行しており、弾道ミサイルの発射とともに、日本の安全に対して重大な脅威を及ぼしている。2019年版「防衛白書」では、北朝鮮の核兵器開発が「小型化・弾頭化をすでに実現しているとみられる」と初めて記されることが閣議で了承され、弾道ミサイルへの核搭載の危機感が示された。2018年4月、韓国の文在寅大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による南北首脳会談では「朝鮮半島の完全な非核化を南北の共同目標とし、積極的に努力をする」とした板門店宣言が行われ、6月の米朝首脳会談においても「北朝鮮は朝鮮半島の完全な非核化に向け取り組む」ことが共同声明とされた。しかし、その後2019年9月には大統領補佐官を解任されたジョン・ボルトン氏が「北朝鮮は、核兵器を放棄しない」との発表を行い、国際世論を揺るがせている。
日本の国益にとって最大の脅威は北朝鮮の核・ミサイル開発
安倍政権は2013年に、国家安全保障戦略をつくりました。その中で、日本の国益にとって最も重要なのは日本の国家・国民の生存と安全です。これに対する最大の脅威は、北朝鮮の核・ミサイル開発がそのリストの1番か2番に出てくるのではないかと思います。具体的にいうと、ノドンミサイルです。これは日本全域を射程に収めているわけですが、これに核を搭載して、日本を攻撃するというシナリオが現実のものとなったら、どうなるか。専門の方が言うのは、北朝鮮は200発から300発ぐらいノドンを持っているだろうということです。また「デコイ」という言葉がよく使われますが、ミサイルに何が積まれているのかが分からない。ですから、国際社会が国連や米朝交渉といったプロセスで北朝鮮に完全非核化を求めて圧力をかけている中、これをなんとか成功に導いていくという意味での外交が日本にとって極めて重要です。
小原雅博北朝鮮の脅威と日本の国益(1)北朝鮮の脅威とは(小原雅博)

環境・資源

セルロースナノファイバー
ナノファイバーとはナノテクノロジーにより製造される次世代型素材で、「直径1~100nm(ナノメートル)、長さが直径の100倍以上の繊維状物質」と定義される。中でも「セルロースナノファイバー」は樹木などの植物に含まれる非常に細い繊維のこと。また、セルロースナノファイバーは植物繊維に由来することから、生産・廃棄に関する環境負荷が小さく、しかも軽量である。他にも、鉄鋼の5倍以上の強度であること、ガラスの50分の1の低線熱膨張性に加え、比表面積が大きく、においの除去に適するなどが特性として挙げられる。こうした特性を活かして、家電製品、住宅建材、内装材、自動車部品、食品、医薬品など、多様な分野での応用が期待され、技術開発が進められている。
先端材料としてセルロースナノファイバーへの関心が高まっている
日本は2030年までに2013年比で26パーセント、さらに2050年までに80パーセントの二酸化炭素の放出量削減という大きな目標を立てました。これを達成するためには、できるだけ二酸化炭素を排出しないようにするだけでは不十分で、排出した二酸化炭素を植物に固定化することでエネルギーとマテリアルに変換するというプロセスを進めなければいけません。このような背景から、バイオマスの利用の促進、その中でも先端材料として使い得るセルロースナノファイバーへの関心が高まっているのです。
磯貝明セルロースナノファイバーとは(1)バイオマスと環境問題(磯貝明)

環境・資源

長期気候変動
「異常気象」は、長期的な気候変化の傾向と、年ごとの激しい気候変動の2つの影響が重なったときに発生する。このうち、長期的気候変動による影響の最たるものが地球温暖化であり、この問題は人類が抱える最大課題の1つとして、2015年のパリ協定、2019年の気候行動サミットなどでたびたび議論されてきた。東京大学先端科学技術研究センター副所長の中村尚氏によると、長期的気候変動を観測すると、地球温暖化には加速期と減速期のあることが判明。さらに減速期には夏は温暖化傾向に、冬は寒冷化傾向になる、すなわち季節性が拡大することも分かってきた。このような気候変動の波に、ある期間だけに発生する顕著な自然変動が重なることで、社会的に大きな影響を与えるような異常気象が発生するのである。
極端な異常気象は長期的な気候変動に短期的な自然変動が重なることで生じる
温暖化や長期的気候変動に、ある期間だけ続くような顕著な自然変動が重なることによって、社会的に大きな影響をもたらすような異常気象、極端な現象が発生するというわけです。よって、温暖化とともに豪雨あるいは猛暑のリスクがこれからますます高まると思います。日本にとっては、台風の被害がさらに深刻化する可能性に対して、備えなければならないといえるでしょう。
中村尚異常気象と気候変動・地球温暖化(7)長期的な気候変動 (中村尚)

教育

教育改革
2020年度から「新学習指導要領」が導入され、新たな「大学入試共通テスト」の実施が始まる。新カリキュラムの導入は2020年度は小学校だけだが、中学・高校と順次適用されていることが決まっている。また、「高等学校教育、大学教育、大学入学者選抜を通じて学力の3要素を確実に育成・評価する、三者の一体的な改革を進めることが極めて重要である」と、文部科学省は「高大接続改革」に本腰を入れる姿勢を表明している。学力の3要素とは、1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度。これらを実現するために英語力とアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)が重視されることになる。いずれもグローバル化の進展やAIをはじめとする技術革新などに伴い、これからの世代は「予見困難」な時代に遭遇するとみての抜本的な改革で、戦後最大規模になると予想されている。
明治維新以来といわれる「教育改革」で何が変わるのか
今回の教育改革、いわゆる高大接続改革は、「学力観」を見直しました。身につける力を「学力の3要素」と定義しています。1つ目は十分な知識・技能、2つ目はそれらを基盤にして、答えが1つに定まらない問題に対して自ら解を見いだしていくための思考力・判断力・表現力。3つ目はこれらのもとになる主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度。これを主体性・多様性・協働性と呼んでいます。この「学力の3要素」を身につけるということについて、高校、大学、入学者選抜を一体的に改革していくことが求められています。つまり、高大接続改革の大きな目的は、入試改革ではなく高校教育、大学教育、入学者選抜の三位一体となった教育改革なのです。
小林浩教育改革で何が変わるのか(1)高大接続改革の背景と目的(小林浩)

教育

AI人材育成
AI(人工知能)に関わる研究者やデータサイエンティストなど、AIに造詣の深い人材を「AI人材」と呼ぶ。2017年12月、中国のネットサービス大手テンセントの研究機関であるテンセント・リサーチ・インスティテュートが「グローバルAI人材白書」を発表した。それによると、AI研究や開発に携わっている人は、30万人。世界中の企業は100万人のAI人材を必要とするところ、70万人の不足を抱えているのだという。AI人材の育成に力を入れているのはアメリカと中国だが、日本でも2025年間でにAIの基礎知識を持つ人材を年間25万人育てるという目標が、2019年6月に打ち出された。AI人材は「AIの問題を解決する人材」「AIを具現化する人材」「AIを活用する人」と、文部科学省により三段階に定義されている。
今、AI人材育成が日本全体で非常に重要な課題になっている
今、AIの人材を育成するというのは、日本全体で非常に重要な課題になっています。政府が25万人の人材を育成すると言っていましたが、注意しないといけないのが、AIといった場合にかなり幅広いテクノロジーを指すので、従来からのIT技術もAIといわれる場合が多いということです。特に私が注力しているディープラーニングは非常に新しい技術で、世界中がしのぎを削って開発競争をしているところです。しかし、技術が新しすぎてなかなか教えられる人がいない、あるいは若い人しか教えられないという状況になっています。
松尾豊日本のAI人材育成に向けた取り組み(松尾豊)