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宇宙ビジネスでイノベーションを起こすには基礎科学が重要

宇宙ビジネスの現在と未来(2)基礎科学の重要性

情報・テキスト
基礎科学がおろそかにされている――。そういった危機感に背中を押され、株式会社ALE(エール)が実用化を目指す人工流れ星。そして、社長の岡島礼奈氏は「宇宙ビジネスは大きくなるしかない領域だ」という。このプロジェクトが実現すれば、エンターテインメントとしての楽しみに加え、高層大気のデータの所得によって、さまざまな分野への応用が可能となる。(全5話中第2話)
※インタビュアー:柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)
時間:14:22
収録日:2019/09/10
追加日:2019/11/28
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≪全文≫

●すべてはミッションから始まる


柳川 ここまで、エンジニアの方ががんばってくれたり、人工流れ星を開発したりというお話をお聞きしましたが、会社をつくってから人を集めたのでしょうか?

岡島 はい。

柳川 会社ができるまでのお話をお伺いしたいのですが、会社設立前は、人工流れ星の技術は明確には進んでいなかったわけですよね?

岡島 そうですね。2009年から大学の先生方と一緒に研究を始めたというお話をしましたが、書類上会社が登記されたのは、2011年の9月になります。会社という組織ができたことで、大学との共同研究についても表立って結べるようになってきたという経緯があります。

 そのなかで、2013年の12月に、流れ星の粒が三等星の明るさに光ることがわかり、2014年の2月にとある新聞社さんが私の取り組みを紹介してくれたのです。「こういうことをやろうとしている人がいる」「今、三等星の明るさで光っている」「これからもっと明るくしたい」というような記事だったのですが、それを読んだ流れ星を専門に研究されている先生が、「実は自分もやりたかった」とメールをくださったのです。

 それで今、一緒に共同研究させていただているのですが、本当にそうした面白い出会いがありました。そして、明るく光ることがわかったので、そろそろ事業化したほうがいいなと思い、メンバーを募りながら、2015年にファンドレイズ(資金調達)をして、2016年にこのオフィスを構えたという経緯があります。

柳川 なるほど。そうすると事業化するという話になるまでは、会社はつくったけれど、実態としては研究開発をしているというのに近かったのでしょうか?

岡島 そうですね。ビジネスサイドのメンバーは1人もおらず、大学の先生との研究開発のみ進んでいました。

柳川 そのときは、とにかく流れ星を人工衛星から降らすという目的を、どうやったら達成できるかに集中していたということですか。

岡島 そうですね。


●なぜ流れ星の研究に強い思いを持ち続けられたのか


柳川 2009年に流れ星の研究を本格的に始めたというのは分かったのですが、なぜそこまで強い思いを持って続けることができたのでしょうか。流れ星を降らせたいという思いが強かったのか。あるいは人工流れ星の技術を開発してみたかったのか。どちらの思いが強かったのでしょうか。

岡島 それでいうと、ミッションに近いのかなと思っています。天文学を研究する中で、日本の基礎科学への閉塞感を強く感じていました。実は、流れ星を流すというのは実現したいことの1つに過ぎず、本当にやりたいことは私たちの掲げるミッションである「科学を社会につなぐ」、そして「宇宙を文化圏にする」ことなのです。

 もう少し詳しくお話しすると、「基礎科学は役に立たない」とよく言われるのですが、私はイノベーションを起こして社会を進化させるのは基礎科学だと信じています。そこをおろそかにしては人間は絶対に進化しないと思っているからです。ただ、自分は研究者には向いていませんでした。では、何が向いているかなと考えたときに、お金の流れだったり、研究者ではない別の手法で基礎科学を発展させることはできるのではないかと思ったのです。

 今はまだ、直接は基礎科学の発展に貢献できていないのですが、流れ星が流れ出すと高層大気のデータが取れたりと、地上でエンターテインメントでプロフィットを得ながら、実は科学も発展するという、そういった両輪ができれば、新しいモデルになるなと思っています。

 ですから、流れ星を流してみんなに楽しんでもらうというのはもちろんやりたいことではあるのですが、それ以上に科学を発展させる新しい手法をつくることがモチベーションになっています。


●高層大気のデータの使い道


柳川 なるほど。実は今日の対談にぜひ登場していただきたいと思った理由は、単に流れ星を流すだけではなく、おっしゃるように高層大気でさまざまなデータや情報が得られるなど、これからかなり発展性がある話だと思ったからなのです。そう意味で、利益を得ながら科学も発展させるという両輪になっている話はとても面白くて、重要なところですね。

 でも、最初の頃から、そういったことが、なんとなくできるのではないかと思っていたのですか?

岡島 そうですね。科学を発展させて、その科学の知識を使いながら、みんなを楽しませることができるのは、とても面白いなと感じています。

柳川 おそらく、この動画を見ていらっしゃる方のなかには、宇宙や宇宙ビジネスに詳しい方だけでなく、今までそうしたことを聴いたことがなかったという方もいらっしゃると思いますので、高層大気の情報が分かると、どういうメリットがあって、どういう可能性があるのかについて少しお話しいただけますか?

岡島 私...
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